令和シニア研究所 リーダー
10年以上にわたりデザイナー・ディレクターとして運用型広告に携わる。
現在は、テレビCMやWebCMなどの動画広告を中心に、クリエイティブディレクションに従事。確実に広告成果を上げる運用型テレビCMを得意とする。
2024年に「令和シニア研究所」を立ち上げ、シニア層のデジタルメディア活用やオンライン行動を分析。令和時代のシニアライフが活発で多様であることを明らかにし、シニア層向けのマーケティング活動を推進している。
定年退職とともに仕事からリタイアする、という時代ではなくなりました。現代はマルチステージの人生を送る人が増えています。60代での再雇用、学び直し、転職、起業。一本道の典型的なライフステージを順番に進んでいくというよりは、いくつもの道が並んでいる。そんな世の中になって久しいです。
第3回 令和シニアと働きかた―『稼ぎながら楽しむ』新しいライフスタイル
「ニューノーマルを生きる令和シニア」第3回は、変化する令和シニアの「働きかた」を取り上げます。
定年退職とともに仕事からリタイアする、という時代ではなくなりました。現代はマルチステージの人生を送る人が増えています。60代での再雇用、学び直し、転職、起業。一本道の典型的なライフステージを順番に進んでいくというよりは、いくつもの道が並んでいる。そんな世の中になって久しいです。
人生100年時代といわれる今、令和シニアのなかには、60代で引退するという選択をしない方も多くいらっしゃいます。さらに、はじめから引退を前提にせず、50代のうちから準備を始めている中高年層の動きも見えてきました。
この変化は、意識調査の中の話だけではなく、実際の行動データに、はっきり表れてきています。
2026年7月に、当社Hakuhodo DY ONE令和シニア研究所は、株式会社ヴァリューズ主催のウェビナー「令和シニア徹底解剖」に、株式会社博報堂とともに登壇しました。今回は、そこで発表した内容を一部抜粋してご紹介します。本稿の行動データや詳細な分析は、株式会社ヴァリューズにご協力いただいたものです。
株式会社ヴァリューズは、国内最大規模となる一般消費者250万人規模のWeb行動ログや購買データを保有しています。実際に「何を検索し、何を見て、何を買ったか」まで見えるのが特徴です。
ウェビナーは「仕事」「ヘルスケア」「テクノロジー」「エンタメ」「社会参画」、5つのテーマで構成されましたが、本稿では「働く」をテーマに「仕事」「社会参画」での分析をご紹介したいと思います。
■本記事で利用している分析ツール
Dockpit|競合も、業界も、トレンドもわかるリサーチエンジン|株式会社ヴァリューズ
Perscope|生活者理解を一歩先へ導くリサーチエンジン|株式会社ヴァリューズ
50・60代の新しい働きかた「スポットワーク」「リゾートバイト」

行動ログによると、スポットワーク大手のタイミーとシェアフルにおいて、50代以上のユーザーは合計で650万人以上にのぼります。さらにシェアフルの場合、月の平均アプリ起動日数は11日に達成し、3日に1回はアプリを開いている計算になります。
なおタイミーは比較的若年層が多い一方で、シェアフルは60代の利用者数が50代に近い水準です。同じスポットワークでも、サービスごとに年代構成は違います。
さらに、もうひとつ取り上げられたのが、温泉地やリゾート地で、住み込みで働くリゾートバイトです。1日数時間・単発で行うスポットワークよりも、数日〜数ヶ月単位の住み込みや期間をまとめた勤務が中心になる働きかたです。
関心層の年代分布は20代と50代の二つの山。定年退職と重なる60代もしっかり入っており、世帯年収の高い層も含まれているとのこと。「生活に困って季節労働を探す」という図式ではない方もいらっしゃることがわかります。

株式会社ヴァリューズの行動データによると、検索の背後には二つの動機があります。ひとつは旅行です。リゾートバイトを検索する人は、旅行・宿泊サイトの利用が特徴的に多くなっています。もうひとつは、あわせて自己実現で、行動データにアンケートを掛け合わせると、50・60代の関心層は「自分らしさを大切にする」意識が高く出るそうです。

ウェビナーでは、Perscope で抽出された実際の行動履歴が紹介されました。定年退職などで、現在はフルタイムの勤務を離れている60代男性の例です。
1. 「リゾートバイト 広島」と検索
2. 住み込みの求人ページを閲覧
3. 「リゾートゴルフ 広島」と検索
求人情報と、同じ地域のゴルフの情報収集が、同じタイミングで行われていました。働くこととレジャーが、ひとつの情報収集行動の中で一体になっています。
他にも、50代会社勤めの女性が、ニュースのリゾートバイト特集・人生100年時代の働きかたに関する記事を目にして、そのあとリゾートバイトの求人検索に入っているというログもありました。
こうした行動から見えてくるのは、こんな姿ではないでしょうか。令和のシニアは現役感が強く、趣味を満喫しながらも稼ぐことを検討している。定年退職でフルタイムでなくなるタイミングや、まとまった休みが取れそうな時期に、リゾートバイトのような選択肢を探している。以前なら「定年退職して引退」だった場面で、この時代ならではの新しい選択肢を求めている。
令和のシニアは当たり前のようにスマートフォンで情報収集行動をするからこそ、最新の、自分に関心の高い情報に触れやすく、そうした令和シニアの欲求に社会が応えられるようになってきている、とも言えるかもしれません。
「役に立ちたい」と「自分らしさを大切にしたい」
共存した先で求める働きかた
ボランティアのデータも、類似の傾向を示しています。
「ボランティア」で検索する人は年間約70万人。こちらも、20代と50代に山があり、50代以上が3割を超えていました。
60代以上に絞って価値観を見ると、「誰かの役に立ちたい」と「自分らしさを大切にしたい」の両方が特徴的に高い。奉仕と自己実現の欲求が共存しています。

リゾートバイトと動機が少し似ているかもしれませんが、旅をしながら地域のお手伝いをするサービスも、50・60代を中心に伸びています。
内閣府は、個人のスキルや都合に合わせて仕事を細分化する「モザイク型のジョブマッチング」を推進していて、短時間でも、そのときの自分にできることだけでも働ける、そのための受け皿が広がり、制度づくりも進められつつあります。
働くことも、社会に参加することも、背景には役に立ちたい、自分らしくいたい、まだまだ現役だから両立しながら稼ぎたい。そのための選択肢を、自分の条件に合わせて選んでいるのではないでしょうか。
新しい令和シニアのライフスタイルから提案する
今の60代は、大量消費時代の第一世代と言われます。次々に商品が生み出された時代を生き、新しいものを試す瞬発力があり、キャリアも退職後の過ごし方も、誰かに習うのではなく自分で試行錯誤してきた世代です。
だからこそ、従来の「シニア向けサービス」は、「これは自分たち向けではない」と受け取られてしまうこともあるのではないでしょうか。
一方で、新しい老後モデルを提案し、商品やサービスを訴求できれば大きなチャンスがあります。








