令和シニア研究所 リーダー
10年以上にわたりデザイナー・ディレクターとして運用型広告に携わる。
現在は、テレビCMやWebCMなどの動画広告を中心に、クリエイティブディレクションに従事。確実に広告成果を上げる運用型テレビCMを得意とする。
2024年に「令和シニア研究所」を立ち上げ、シニア層のデジタルメディア活用やオンライン行動を分析。令和時代のシニアライフが活発で多様であることを明らかにし、シニア層向けのマーケティング活動を推進している。
Hakuhodo DY ONEの「令和シニア研究所」が2024年8月におこなった調査によると、60代は他の年代に比べて新たなことに挑戦する意欲が極めて高いことが分かりました。「最近新しくはじめたことがある」と回答した割合は、60代では約40%に達し、全年代でトップとなっています。
第5回 注目を集めるシニア世代のインフルエンサー「グランフルエンサー」
Hakuhodo DY ONEの「令和シニア研究所」が2024年8月におこなった調査によると、60代は他の年代に比べて新たなことに挑戦する意欲が極めて高いことが分かりました。
「最近新しくはじめたことがある」と回答した割合は、60代では約40%に達し、全年代でトップとなっています。

具体的な新たな取り組みとして挙げられたのは、「ピラティス」「ジムでの筋トレや有酸素運動」「週に数回のウォーキング」などの運動を中心とした活動のほか、「noteへの投稿」「YouTube動画の作成」「孫とのLINEのやりとり」のようなデジタル分野での取り組みも見られます。さらに、「古事記の探求」や「フランス語・韓国語・中国語の学習」「原付二種のバイクでのツーリング」「3Dプリンターでの立体製作」など、分野も目的も多彩です。
こうした背景には、子どもの独立や自身の定年退職により可処分時間(自由に使える時間)が増えたことがあり、それを活かして前向きかつアクティブに趣味や娯楽を楽しむシニアの姿が浮かび上がります。
また、これまでのシリーズで語ってきた通り、シニア層のスマートフォン利用率や、SNS・動画配信を中心としたデジタルメディアの利用時間も大きく伸びています。
デジタル上でのコミュニティ形成や情報収集など、シニアのつながり方も多様化が進み、これまでにない新しいシニア像が形づくられているのでしょう。
例えば、Instagramで人気を博すシニアファッショニスタ(通称「インスタグランマ」)の登場や、平均65歳以上のメンバーで構成されたeスポーツチームなど、従来のイメージを覆す存在が注目を集めています。
シニア世代のインフルエンサー「グランフルエンサー」とは
ある調査によると、50歳以上の9割が「同年代の意見を参考にしたい」と考える一方で、約半数が自分世代向けのSNS情報が不足していると感じているようです。
※出典:株式会社アイスタイル「@cosme調べ『大人世代の実態』調査結果 ~消費意欲は旺盛ながら、大人世代の約半数は自分の世代に向けたSNS情報は不足していると実感~」(2024年4月2日)
こうしたシニア層に影響を与えると注目されているのが、生活や日常に根差したリアルな体験や利用方法を発信する「グランフルエンサー※」です。
※グランフルエンサーとは、グランド・ジェネレーションを意味する「グラン世代」と「インフルエンサー」を掛け合わせた造語です。
グランフルエンサーは主に北米を中心に世界中で注目されており、「WALL STREET JOURNAL」や「SXSW2024」、国内メディアなど、さまざまなメディアで取り上げられています。
インフルエンサーマーケティング市場は急速に拡大しており、2024年の市場規模は884億円、2027年には約1.47倍の1,302億円に成長すると予測されています※。
※出典:2024年国内ソーシャルメディアマーケティングの市場動向調査|サイバー・バズ/デジタルインファクト|2024年11月
Hakuhodo DY ONEでは、人口動態を踏まえ、グランフルエンサー市場がインフルエンサーマーケティング全体の約20%規模に成長するのではと見込んでいます。
実際に世界で活躍するグランフルエンサーには、96歳のファッショニスタHelen Elam Van Winkle氏(通称@baddiewinkle)が挙げられます。
2014年に孫娘の投稿がきっかけで拡散され、現在では300万人のフォロワーを抱える人気インフルエンサーとなっています。ファンの70%が18〜34歳の女性です。
日本でも夫婦でカップルコーディネートを楽しむbon・ponさん(@bonpon511)や、YouTubeやTikTokで父と子の日常を発信する「親子バラエティ(@oyakoTVshow)」さん「最強ばあちゃんときどき玄孫(@saikyo1928)」さんなどが人気です。
きょうこばぁばさん(@kyokoba_ba)や画家の柴崎春通さん(@WatercolorbyShibasaki)はアパレル企業とのコラボレーションや企業タイアップでも注目を集めています。
農業の日常を伝える「ひろちゃん農園(@hirochan-farm)」さんは、綾小路きみまろさんもファンと公言するなど、同年代からの支持も厚い存在です(出典:婦人公論オンライン)。
こうしたグランフルエンサーは、同年代のシニア層には「等身大の視点」で共感され、若年層からは「憧れ」「学び」「エンタメ」としても受け止められ、世代を超えて共感を呼ぶ存在になっています。発信力や影響力は今後さらに広がる可能性を秘めており、新たなロールモデルとして注目されています。
※2025年7月時点の調査情報にもとづきます。

シニア層が自らの経験や興味を、デジタルメディアを介して全年代へ、世界へ発信する時代が訪れ、「グランフルエンサー」は今後もますます存在感を増していくでしょう。

なお、HakuhodoDY ONEでは、シニア世代のインフルエンサーに特化したマーケティング支援サービス「グランフルエンサーズ」の提供を開始しました。百万名を超えるクリエイターが所属するBitStar社と共同で、シニアに特化したインフルエンサーネットワークを構築しています。
本サービスでは、グランフルエンサーの選定から、効果的なマーケティング戦略の立案・実行まで、一貫して支援を行っています。また、シニア層に特化したインフルエンサーネットワークを共同で構築したことで、より多様なグランフルエンサーの活用が可能となる体制を整備し、その取り組みを拡充しました。
マーケティング現場でもすぐに活用できる注目のサービスですので、ぜひチェックしてみてください。
(参考:https://www.hakuhodody-one.co.jp/news/news-release_202504082018/)
バックナンバー一覧
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