現在パリのビジネススクールでマーケティング修士号を取得中。グローバルな事業展開を探求している。
欧米の暮らしの中で、日本人が”なんか素敵だな”と思うことは、割と地元民にとっては仕方なくやっていることがいくつもある。
日本の刺し子が”Le Sashiko”として再評価されている。誰かの消極的選択は、海を越え、違う誰かの”素敵”に変わる
欧米の暮らしの中で、日本人が”なんか素敵だな”と思うことは、割と地元民にとっては仕方なくやっていることがいくつもある。
日常の制約から生まれた、”お洒落”なヨーロッパの風景
例えば、ヨーロッパのキッチンに並んだおしゃれな瓶。これは、筆者が実際にフランスで暮らしてみると、その背景が見えてきた。単純にお店で買う包装が破れやすく保存に向いていなかったり、マルシェで買うと紙袋で渡されることもあったりで、瓶に移し替えざるを得ないのだ。
また、間接照明のインテリア。こちらも、欧米人の目はアジア人に比べて光に弱いため、目に優しい設計を考慮した結果こうなったと言われている。
アンティークなアイアンフェンスも、表面の凹凸が魅力だが、これも元々は錆びついた部分をペンキで上塗りした結果、偶然できた産物である。

日本の節約術が「匠の技」に昇華
ボロ布を”継ぎ接ぎ”する技術である刺し子が、フランスでは”LeSashiko”としてじわじわと浸透している。筆者自身も実際、フランス人マーケターの口から日本の美的センスとして”Furoshiki”と並んで”Sashiko”の名前を何度か聞いたことがある。
例えば、パリに構えるUniqloのお店では刺し子によるリペアサービスがあったり、フランスの大手出版社が刺し子の本を出版したりしている。また、パリには刺し子の専門店まで出てきているのだ。

刺し子へのフランス人のイメージを探ると、なぜ注目されているかが見えてくる。
まず、壊れたものを修繕するというサステナビリティの観点。そして、その幾何学模様の美しさ。
更に特徴的なのは、”Wabi-sabi(侘び寂び)”といった日本の美学に結びつけている記事も多いことだ。これは、LVMH傘下で日本人創業のブランドであるKENZO、トヨタ車の高級ブランドラインであるLexusといった、日本のルーツを持つハイブランドが刺し子を日本の匠の技として、知名度を上げてきたことが大きいのではないか。親日家であり日本文化への造詣が深いフランスでは、この文脈もかなり有効に働いていると思われる。

制約から生まれた人々の工夫が、異文化で昇華する
欧米のキッチンも、日本の刺し子も、元々は生活の中の不便を取り除く工夫から生まれた。しかしそれらは、人々の暮らしに深く根づいた味わいのある文化そのものでもある。その文化が背景にあるからこそ、ただのガラス瓶がおしゃれに見えたり、継ぎ接ぎが匠の技に輝くのだろう。
今、何気なく使っているものが、未来のブランド戦略に活かされるかもしれない。
出展
https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajpregu.00355.2006
https://www.kenzo.com/en-ch/sashiko.html
https://www.uniqlo.com/fr/fr/news/topics/2025051501/
https://parissecret.com/re-uniqlo-reparation-vetements-rivoli/
https://www.lexus.fr/decouvrir-lexus/nos-anecdotes-marquantes/coutures-sashiko
https://www.ungrandmarche.fr/blog/diy/sashiko-broderie-japonaise/
https://www.bergeredefrance.fr/mon-p-tit-cours-de-poche-le-sashiko.html








