令和シニア研究所 リーダー
10年以上にわたりデザイナー・ディレクターとして運用型広告に携わる。
現在は、テレビCMやWebCMなどの動画広告を中心に、クリエイティブディレクションに従事。確実に広告成果を上げる運用型テレビCMを得意とする。
2024年に「令和シニア研究所」を立ち上げ、シニア層のデジタルメディア活用やオンライン行動を分析。令和時代のシニアライフが活発で多様であることを明らかにし、シニア層向けのマーケティング活動を推進している。
「シニアマーケティング」や「高齢者市場」を語るとき、私たちはいまだにシニア層を"デジタルに弱い世代"という前提で話していないでしょうか。しかし、令和を生きるシニア層(おおむね60代~70代前半)の情報行動はいま、「アクティブシニア」として語られていた高齢者像と大きく変化しています。
第1回 令和シニアとAI─高齢者市場のニューノーマル。PCやインターネットより速く『日常』になったAI
「シニアマーケティング」や「高齢者市場」を語るとき、私たちはいまだにシニア層を"デジタルに弱い世代"という前提で話していないでしょうか。しかし、令和を生きるシニア層(おおむね60代~70代前半)の情報行動はいま、「アクティブシニア」として語られていた高齢者像と大きく変化しています。
昨年の連載「令和シニアのスマートライフ」では、デジタルシフトに踏み出す令和シニアの傾向をお伝えしてきました。2026年度は、その変化が具体的な行動として現れてきたリアルな実像を追いかけます。
本連載「ニューノーマルを生きる令和シニア」では、AIの普及やスマートフォンにより大きく変化しつつある令和シニアにまつわるさまざまなテーマを取り上げます。
第1回は、最も劇的に変化しているテーマのひとつ「令和シニアとAI」です。
PCやインターネットより速く「日常」になったAI
スタンフォード大学HAIが公開した「AI Index 2026」(※1)によれば、生成AIはわずか3年で53%の普及率に到達し、PCやインターネットよりも速いペースで広がっているそうです(ただし国によって大きく異なり、シンガポール61%・UAE 54%・アメリカ28.3%)。AIが社会に組み込まれるスピードは、テクノロジー史上類を見ないレベルにあります。
日本でも約半数が生成AIユーザーに。50~60代でも前年比2倍の伸び。
モバイル社会研究所の最新調査(※2)によれば、15〜69歳の生成AI利用率は51%。1年前の27%からほぼ倍増し、ついに過半数に到達しました。
注目すべきは、全年代で利用率が拡大している点です。10〜20代で特に利用率が高いのは想像の通りですが、50~60代でもプライベートでの利用率は15%から34%へ(+19ポイント/約2.3倍)、仕事・学業でも12%から26%(+14ポイント/約2.2倍)に伸長しています。
AI検索も8か月で3.5倍、中高年の信頼度は若年層と並んだ
こうしたAI利用の広がりは、社会のあらゆる場面で変化を生んでいますが、デジタルマーケティングの観点からとりわけ注目すべきは、AI検索の急伸でしょう。
Hakuhodo DY ONEの次世代検索研究所 「piONEer(パイオニア)」が発行した「AI検索白書2026」(※3)によれば、AI検索の利用率は、2025年3月の10%未満から、わずか8か月で約30%へと3.5倍に急増しました。ChatGPTの認知度は前回調査から+36.2ポイント伸びて7割を突破し、2025年9月に日本語版が提供されたGoogle のAIモードもわずか2か月で認知度2位に躍り出ています。
さらに目を引くのは、年代による利用率の差がほぼなくなってきたことです。今回の調査では40〜60代の伸びが大きく、先行していた若年層との差は一気に縮小しました。

画像出典:AI検索白書2026
生成AIの回答に対する信用度も、50代は前回比+13.6ポイント、60代は+8.6ポイントと大きく上昇しています。わずか1年で、「AIはちょっと苦手」と身構えていた中高年層も若年層と遜色ない水準でAIを信頼するようになり、AI利用に関しては世代間のギャップは実質的に解消してきていると言えるでしょう。

画像出典:AI検索白書2026
AI普及とともに変化する情報収集行動
利用率・信用度の向上だけでなく、実際に生活者の行動そのものが変化してきています。同じくHakuhodo DY ONEの調査によれば、ユーザーの約4人に1人(23.9%)が"ゼロクリックサーチ"──AIの回答だけで完結し、Webサイトを一切訪問しない──という行動をとっていることが明らかになりました。信用度が若年層と並んだ令和シニアも、この流れに確実に加わっているはずです。検索という、情報収集行動そのものが、世代を問わず変化はじめているのです。
AI検索が会話に近い自然文で答えを返す──つまり「聞けばすぐ答えが返ってくる」体験であることも、令和シニアにとって心理的ハードルを下げた理由の一つでしょう。スマートフォンの検索窓に単語を組み合わせて打ち込むより、自分の言葉で尋ねられるほうが、長年日本語で考え・話してきたシニア層には直感的だと言えるでしょう。
高齢になるほど音声検索との相性がよいというデータもあります。スマートフォンの小さな検索窓に単語を組み合わせて打ち込むより、話して尋ねるほうが手っ取り早いからです。また、70代まで急激に進んだスマートフォン普及とともに、タップ操作などに慣れていないシニア層にとって"障壁を取り除くインターフェース"としてAI検索が機能していると考えています。
マーケターにとって重要な変化のひとつです。検索行動の主戦場が「青いリンクを選ぶ」から「AIの回答を読む」へ移ったことで、AIに"選ばれる"コンテンツをどう設計するか(AIO:AI Optimization)が、シニア市場においても避けて通れないテーマになってきました。
AI検索は、この連載の主題である「ニューノーマル」を最もわかりやすく体現しています。一時的な流行ではなく、生活者と情報の接点そのものが書き換わった──その現場を、令和シニアも若年層同様にすでに歩き始めているのです。
シニアマーケティングを考えるとき、これまでの"デジタルに弱い世代への特別対応"という前提はもはや通用しません。だからこそ、マーケターに求められるのは、"シニア向けの配慮"ではなく、ニューノーマル時代の生活者として令和シニアをどう捉え直すかという視点のアップデートではないでしょうか。
【まとめ】令和シニアとAI
- 生成AI利用率:50〜60代も1年で約2倍(プライベート15%→34%、仕事・学業12%→26%)
- AI検索利用率:8か月で3.5倍に急増。40〜60代の伸びが顕著
- 生成AIへの信用度:50代+13.6pt、60代+8.6pt──世代間ギャップは実質消滅
- 約4人に1人がゼロクリックサーチ──検索行動そのものが変化
- シニアマーケティング・高齢者市場の常識が変わる:「デジタルに弱い世代」という前提は通用しない
- AIO(AIOptimization)はシニア市場でも必須:AIに選ばれるコンテンツ設計が鍵
※1 出典:Stanford Institute forHuman-Centered AI, The 2026 AI Index Report, Chapter 4: Economy.
※2 出典:NTTドコモ モバイル社会研究所「2025年-2026年 生成AI利用意識・行動調査」(2026年4月公開)
※3 出典:HakuhodoDY ONE 次世代検索研究所 piONEer「AI検索白書2026」(2026年3月公開)






