学生時代からの憧れだった映画業界に入り、気づけば4年が経った。WEB広告にも携わる中で実感しているのは、特にSNSの領域について「これが正解だ」と言い切れる手法が存在しないということだ。
“広告っぽいと見られない”時代に、映画をどう届けるか
学生時代からの憧れだった映画業界に入り、気づけば4年が経った。WEB広告にも携わる中で実感しているのは、特にSNSの領域について「これが正解だ」と言い切れる手法が存在しないということだ。
映画の広告というと、ポスターやテレビCMを思い浮かべる人が多いかもしれないが、SNSをはじめとしたWEBでの感じ方は少し違う。“広告らしい広告”ほど見られない傾向にある。
SNSでの映画プロモーションは、公開に向けた長期戦だ。情報解禁や予告の発信に加え、日々の投稿でどれだけ作品の話題をタイムライン上に残し続けられるかが重要になってくる。例えば、予告映像そのものよりも、「このシーンが気になる」「この人誰?」「あの人が出ているんだ」といった短い感想や疑問が生まれることで、投稿は誰かのリアクションとともに拡散されていく。オフショットや短尺動画についても、情報量の多さではなく、思わず反応したくなる余白があるかどうかで動き方が変わる。
インフルエンサーの方々によるPR施策も同様に、単なる拡散の手段ではない。フォロワー数だけではなく、その方の発信の中で作品がどう語られるかが重要になる。考察を得意とする発信者であれば作品の解釈を深めてくれ、バラエティー色の強いクリエイターの方であれば作品への入口を広げてくれる。一方で、相性を見誤れば、作品の魅力が十分に伝わらない可能性もある。
こうした流れは、近年のヒット作の広がり方にも表れている。2023年公開『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』、2025年公開『国宝』の2作品についても、公開後にSNS上で感想が蓄積され、徐々に話題が広がりロングランにつながった作品だ。もちろん、作品そのものの力が前提にあるが、初速を大きく押し上げる広告というよりも、鑑賞後の感想や口コミが連鎖していく構造が、結果としてヒットの持続につながっているように見える。その熱量が可視化され、さらに次の観客へと伝わっていく過程には、SNSならではの広がり方がある。
映画広告は、単に作品の情報を届ける仕事ではなくなっている。作品を“知ってもらう”だけでなく、誰かの一言や感想をきっかけに、自然と話題に触れてもらうこと。そのために、広告でありながらも広告に見せないという矛盾した設計が求められている。
SNSのトレンドは常に動いているため、確実な正解が見えるわけではない。ただ少なくとも、作品を一方的に届けるのではなく、誰かの反応を起点に広がっていく流れを作ることが、今の映画広告における重要な役割のひとつになっている。そして広告の役割自体も、作品の認知を一方的に広げるものから、観客の反応が生まれる“起点”をつくるものへと少しずつ変化しつつある。









