2012年博報堂入社。クリエイティブディレクター / クリエイティブ局部長 / YOKI リーダー。博報堂DYメディアパートナーズに出向し通販クライアントを担当。その後、マーケティング部門に異動し、コミュニケーション戦略・商品開発・事業戦略・中期経営計画策定を担当。現在は、クリエイティブ部門に属し、複数領域を統合的にプラニング。
【主なクリエイティブワーク】
■PPIH「ドン・キホーテ」
■PPIH「情熱価格・偏愛めし」
■PPIH「ダメ出しの殿堂・マジボイス」
■TWINBIRD「匠 Premium」 ほか
広告の世界に身を置いていると、「他との違いをどう作るか」という問いに日々向き合うことになります。しかし、本当の意味での「独自性」は、単なる表面上の演出ではなく、その企業のDNAから滲み出る「必然性」からしか生まれない――。
スバル ヒコーキ野郎が作ったクルマ
1. 「異端」がスタンダードを超える瞬間
広告の世界に身を置いていると、「他との違いをどう作るか」という問いに日々向き合うことになります。しかし、本当の意味での「独自性」は、単なる表面上の演出ではなく、その企業のDNAから滲み出る「必然性」からしか生まれない――。本書『スバル ヒコーキ野郎が作ったクルマ』を読み終えた今、改めてその確信を深めています。
本書は、戦後、軍用機開発を禁じられた「中島飛行機」のエンジニアたちが、その技術と情熱を自動車開発へと注ぎ込んだ軌跡を描いています。スバルの名車「スバル360」がなぜ生まれたのか。その背景には、航空機屋ならではの「頑固なまでの合理性」がありました。
2. 「不自由」が最高のクリエイティビティを引き出す
本書の面白さは、技術者たちが直面した「圧倒的な制約」にあります。戦後の物資不足、厳しいコスト制限、そして先行する大手メーカーという高い壁。そんな中、彼らが頼りにしたのは、既存の車の作り方ではなく、「空を飛ぶための知恵」でした。「1グラムでも軽く、かつ死なないほど頑丈に」。この航空機設計の哲学を自動車に持ち込んだことで、当時の常識を覆す軽量モノコック構造や独自のサスペンションが生まれました。これは我々の業界にも通じる真理ではないでしょうか。予算や時間の制約を嘆くのではなく、その厳しい条件を「独自のアイデア」で突破したときにこそ、他には真似できない唯一無二の表現(プロダクト)が生まれるのだと、彼らの仕事ぶりが教えてくれます。
3. ブランドの「人格」を作るもの
また、本書に登場するエンジニアたちの「キャラクター」も魅力的です。彼らは決してマーケティング的な器用さを持っていたわけではありません。むしろ、自分たちが正しいと信じる技術のためには、経営陣とも衝突を厭わない「不器用で真っ直ぐな人々」でした。しかし、その真摯な姿こそが、今のスバルに通じる「スバルらしさ」というブランドの人格を形作ったのです。昨今、企業の「パーパス(存在意義)」が問われていますが、スバルのそれは、まさにこの「ヒコーキ野郎」たちの意地と誇りそのものだったと言えます。
4. おわりに:物語の根源に触れる
今、私たちが広告を通じて伝えようとしているクライアントの商品にも、必ずこうした「源流の物語」があるはずです。本書は、表面的なスペックの裏側にある、開発者の執念や思考のクセを掘り起こすことの重要性を思い出させてくれます。
「自分たちは何者で、なぜこれを作るのか」。 そんな原点に立ち返りたいとき、この本は技術者のみならず、言葉やビジュアルを扱うすべてのクリエイティブなビジネスパーソンに、進むべきヒントをくれるはずです。







