株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
海外現地法人のマネジメント歴18年(中国・広州/香港、北米・ロサンゼルス/ニューヨーク)。アサツーディ・ケイ現地法人ADK America (WPP Group)のCFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。ニューヨークの最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。
共著に『広告ビジネス次の10年』『2030年の広告ビジネス』(翔泳社)がある。
世界はいま、「生き方を選ぶ」時代に突入しています。自国主義と世界主義が交錯し、それぞれが自らの生き方を選びはじめています。そして、この流れは、国だけでなく、企業やブランド、そして私たち個人にも及んでいます。
『世界は感情で動く』『経済は感情で動く』

マッテオ・モッテルリーニ (著), 泉 典子 (翻訳)
出版社 : 紀伊國屋書店
発売日 : 2009/1/30
行動経済学と神経経済学の視点から、人間の意思決定がいかに感情や直感に左右されるかを「身近なアルアル例」で解説されているベストセラー。自分では合理的と思っている普段の行動や判断も、実は「脳のトラップ(バイアス)」によって影響を受けていることを、「いったんバルコニーに上がって自分を見る深呼吸」として使える例(法則)が紹介されている。
たとえば:
・人々が株価は上がると信じている限り、株価は上がり続ける(予言の自己成就)
・経験の快楽・辛いは、ほぼ終了直近の度合いで決まる(ピークエンドの法則)
・上げた拳が下ろせない(コンコルドの誤謬)
・「まだ半分もある」と、「もう半分しかない」との違い(フレーミング効果)
・基準値を見ないで議論を進める誤り
・新人賞を取ったスポーツ選手の2年目のジンクスとは(大数の法則の無視)
・直感と言うヒューリスティックスによるバイアス偏り(冷静に考えてみれば、全く逆)
・ジャムの種類が増えたら、売り上げが落ちた(後悔を回避する心理)
・読みたいように読んでしまう(先入観のトラップ)
・集団による合議のはずが、実は不合理で危ない意思決定を容認してしまう(集団的浅知恵)
これらは単に、対人交渉や営業のコツとしてだけではなく、現在の世界情勢にも通じる応用が含まれている。近年の「関税措置・報復関税」なども、行動経済学でいう「損失回避性のバイアス」があるかもしれず、さらにに「集団思考バイアス」による自国内の調和(歩調)を優先するあまり、現静な判断が損なわれたり、その事から国際貿易の緊張がうまれ、それを知る各国のメディア論調がさらに個人感情や直感を刺激して拡張させている可能性がある。今こそ「自分バイアスを除いて」逆の目線で読み直しの価値がある(楽しい自己復習だ)。
『海外カンファレンスの歩き方』

出版社 : 翔泳社
発売日 : 2018/3/3
海外カンファレンスでビジネスを創出する具体策を業界の有識者がオムニバス形式で、マーケターをはじめビジネスパーソンが参加すべきおすすめの海外カンファレンスを紹介。
「講演を聴くよりも、ビジネス創出が重要だ」
海外に出張してカンファレンス(やコンベンション)に参加する最終目的は、ズバリ、自社(自己)ビジネスの創出である。「ありがたいお話を拝聴して感動する」とか「講演内容の録音レポートを書く」ことがカンファレンスの醍醐味や主目的ではない。ビジネス・ゴールを持った人達同士が世界中から「一堂に会し」、互いの目的を前進させるために「会話」を促進させる場所を作ることが、国際カンファレンスの主催者の意図だ。
本書の一例のアドバタイジング・ウィークの例に限らず、海外カンファレンスへの参加の際は是⾮とも講演・展示内容(だけ)ではなく自分のビジネスの創出・ゴールにフォーカスを置きたい。参加者やゲストとのビジネス関係性を構築する(しようとする)と、格段に滞在中の成果物が変わる。
早い話、「セミナーの外」で話ができる人が何人居るか(作れるか)と、どれほど深い話に繋げるキッカケを作るかが、カンファレンス全員の集合目的に尽きる。実は招待されている大物ゲスト登壇者の大半も、「このウィーク中に」ニューヨークに滞在する各国のVIPとの会合をセッションの外で設定し、会談ができるのでニューヨークに時間を合わせて集合しているのだ。
講演内容はきっかけにすぎない。それ以外の現場の価値をいかにつかむか。そのカンファレンスの現場で関係をつくるためにすべきアクションとして「GALAパーティー」「公演の合間のロビー」「講演セッション終了後のステージ横の出待ちはどうか?」などの例をあげ、結論として「講演や展示の外にビジネスがある」と締めている(筆者=私自身の執筆部分より)。