第２回　“予防・予測ビジネス”が高齢社会課題を解消する

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急速に高齢化が進む日本で、高齢社会課題を解決するのは容易なことではない。高齢化に伴う生活課題、社会課題は、さまざまな形で顕在化している。

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その最も典型例は、加齢に伴い日常生活に困難を抱える人々の増加、要介護高齢者の増加だろう。令和4年12月時点での要介護者数は501万人。今後、団塊世代が後期高齢者となることで、2030年には670万人まで増加するとの試算もある。（社会保障審議会介護保険部会（第55回）資料）

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2025年には700万人になると言われる認知症高齢者の存在も社会課題のひとつだ。これ以外にも、同じく700万人に達する高齢者の買い物難民（平成29年度総務省調べ）、住宅火災に伴う死者数の約7割が高齢者であること（令和3年度消防庁調べ）なども、高齢由来の課題と言えよう。高齢社会における課題は多岐にわたる。

高齢者の増加により起こるさまざまな生活面における困難、社会課題を低減していくためには、対症療法的な方策では、間に合わない。むしろ、そうした課題や事故が発生する前に未然に防ぐ「予防」の社会的ニーズが高まるはずで、それを受けて各種の予防技術を基盤とするビジネスが生まれてくるだろう。

では、超高齢社会の予防ビジネスとは具体的にどのようなものを指すか、予防医学分野の概念を借りて考えてみよう。
一般に予防は、一次予防、二次予防、三次予防に分類される。最近はこれに加えて０次予防という概念が広がりつつある。一次予防は、生活習慣の改善や健康教育など、病にかからないように施す処置や指導を指し、二次予防は疾病の早期発見・早期治療を、そして三次予防は治療過程におけるリハビリテーションや保健指導などによる社会復帰促進を指す。そして０次予防は、一次予防に至る前の平常時の環境を変えることで全体としての健康度を上げる工夫をなすことを指し、例えば、「健康なまちづくり」などの動きが０次予防にあたる。

こうした各予防段階のレイヤーに応じて、個別の高齢社会課題の対応を検討し、実行案をプランニングしていくことで、新たな予防ビジネスのバリエーションを生み出していくことができるだろう。

具体的に、「認知症」をモデルケースとして考えてみよう。（図表参照）

現在のところ、認知症患者への対症療法はまだ見つかってはいない。しかし、一定の運動習慣やトレーニングを行うことで、認知症の発症を遅らせる効果があることは知られている。そうした既知のエビデンスを活用しながら、当事者（高齢者）が予防意識に目覚め、具体的予防行動として動くための仕組み、ビジネスモデルを築くことで結果的に認知症者の低減に繋げていくことができるだろう。

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 認知症をモデルケースとした予防事例

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予防の働きかけは当事者（高齢者）のみならず、社会環境への働きかけも重要となる。多くの社会課題は、当事者本人の問題のみならず、社会的環境への働きかけが求められるものも多い。こういった視点を持つアプローチも重要だろう。

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また近年のAIに代表される新たなテクノロジーが実用性を持ちはじめてきたことで、予防に関しても漫然と備えるのではなく、個々人の持つ特性や発生確率などをあらかじめ予測した上で予防する、より能動的でパーソナルな予防が可能になる。AIによる機械学習技術を活用し、数多くの症例を学習させることで、将来リスクの予測が可能となりつつある。こうした最新のエイジテックを導入した予防、予測が、高齢社会の課題を解消していくことになるだろう。