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富岡 宙一

富岡 宙一

Dentsu International Indonesia
Dentsu International Indonesia

Business Director


2002年株式会社電通入社。グローバルマーケティング、エクスペリエンス領域で豊富な経験を持つ。

2024年より電通インターナショナルインドネシア(ジャカルタ)にて拠点のマネジメントに従事。

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2023年4月からはこちら過去のFresh EYEへ

インドネシアは、2045年までに一人当たりの名目国民所得を23,000米ドルから30,300米ドルに引き上げ、先進国への移行を目指すという国家的な長期目標を掲げている。

縮む中間層、変わるインドネシア市場:消費のリアルとブランドの勝ち筋


インドネシア マクロ経済概況

インドネシアは、2045年までに一人当たりの名目国民所得を23,000米ドルから30,300米ドルに引き上げ、先進国への移行を目指すという国家的な長期目標を掲げている。2024年10月に発足した新政権も、年率8%の経済成長を目標として掲げ、この目標を強力に支持している。

インドネシア経済は、2000年代以降、概ね5%から6%の堅調な成長率を維持しており、主要な新興国の中でもその安定性が際立つ。この成長は主に内需によって牽引されており、中でも個人消費は安定した基盤を形成している。このような背景から、多くの日系企業が既にインドネシア市場に進出しており、今後も進出を検討する動きが活発である。

しかしながら、インドネシア統計局の報告によると、2025年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比4.87%増に留まり、前年第4四半期(5.02%増)から減速した。これは、2021年第3四半期以来、約3年ぶりの低い伸びである。

縮小する中間層と市場への影響

インドネシアにおける中間層の動向が市場に与える影響が顕著になっている。中間層の割合は、2018年の23.0%から継続的に減少しており、2023年には総人口の18.8%にまで低下した。さらに、2024年には17%台にまで落ち込んだとの報告も存在する。約830万人以上が中間予備層(aspiring middle)へと移行したとされており、これは一人当たりの月間支出額が約200万ルピア(2024年3月時点、日本円で約1.8万円)という中間層の定義ラインを下回る層の増加を意味する。特に、中間予備層では支出の55%以上が食費に充てられており、これは、いわゆる耐久消費財に手が届きにくい層が拡大していることを示唆している(※)。

このような消費構造の変化は、消費者が生活必需品においてもコスト意識を強める一方で、商品の選択において「意味」や「価値」をより重視する傾向を促している。日系企業をはじめとする多くの外資系企業は、高品質・高価格帯の商品ラインナップを展開することが多く、特にコモディティ化が進む商品カテゴリーにおいては、インドネシアの地場企業との競争において厳しい状況に直面している。

したがって、マーケターは、この変化する消費者に効果的にアプローチするために、価格設定の調整、提供価値の明確化、およびデジタルプレゼンスの強化を通じて適応する必要がある。このような市場状況下で成功を収めているサービスや商品の広告キャンペーン事例を以下に紹介する。

成功事例

1. ECサイト「Blibli」

インドネシアのEC市場は東南アジア地域において最も高い成長率を示している。Blibliはインドネシア発のECプラットフォームであり、市場規模では第4位に位置する。

Blibliは、他ECサイトと比較して商品価格は高めに設定されているものの、商品の信頼性や配送品質といった顧客体験の向上に注力している。インドネシアでは、多くの消費者がECサイトでの商品や配送トラブルを経験しているため、「失敗したくない」と考える顧客層から支持を集めている。

Blibliは、著名な歌手Yura・Yunitaの楽曲「Dunia Tanpa Tipu Tipu(偽りのない世界)」とのコラボレーションキャンペーンを実施した。このキャンペーンにより、オーガニックセッション数を前年同月比プラス104%獲得し、ECの主要顧客層である18歳から44歳のセグメントにおいては、Shopeeに次ぐ第2位のSOV(Share of Voice)を獲得することに成功した。

• 説明動画: https://www.youtube.com/watch?v=Toql0p5xKV8

2. ポカリスエット

毎年、ラマダンはムスリム(イスラム教を信仰する人々)にとって極めて重要な宗教的義務であり、約1ヶ月間にわたり夜明け前から日没まで断食を行う。ラマダン入り前の期間は年間で最大の商戦期となり、多くの企業が大規模なキャンペーンを展開する。

Amerta・Indah・Otsuka(大塚製薬のインドネシア法人)は、断食期間中の脱水状態(Bocor)になりやすいという課題に注目し、ポカリスエットの機能的価値を明確に訴求した。具体的には、サフール(Sahur:夜明け前、断食開始前に摂る食事)中にポカリスエットを摂取することで、サボテンのように体内に水分を保持しやすくなるという利点を強調し、競合商品であるミネラルウォーターとの差別化を図った。

このキャンペーンでは、1,300万人を超えるフォロワーを持つインフルエンサー、Fadil・Jaidiとその父親を起用した結果、大きな成功を収めた。

• 説明動画: https://www.youtube.com/watch?v=BB3BoXOp-NA

※ 出典:National Socioeconomic Survey (Susenas)、Indonesia Economic Outlook Q3-2024 LPEM FEB UI

縮む中間層、変わるインドネシア市場:消費のリアルとブランドの勝ち筋


インドネシア マクロ経済概況

インドネシアは、2045年までに一人当たりの名目国民所得を23,000米ドルから30,300米ドルに引き上げ、先進国への移行を目指すという国家的な長期目標を掲げている。2024年10月に発足した新政権も、年率8%の経済成長を目標として掲げ、この目標を強力に支持している。

インドネシア経済は、2000年代以降、概ね5%から6%の堅調な成長率を維持しており、主要な新興国の中でもその安定性が際立つ。この成長は主に内需によって牽引されており、中でも個人消費は安定した基盤を形成している。このような背景から、多くの日系企業が既にインドネシア市場に進出しており、今後も進出を検討する動きが活発である。

しかしながら、インドネシア統計局の報告によると、2025年第1四半期の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比4.87%増に留まり、前年第4四半期(5.02%増)から減速した。これは、2021年第3四半期以来、約3年ぶりの低い伸びである。

縮小する中間層と市場への影響

インドネシアにおける中間層の動向が市場に与える影響が顕著になっている。中間層の割合は、2018年の23.0%から継続的に減少しており、2023年には総人口の18.8%にまで低下した。さらに、2024年には17%台にまで落ち込んだとの報告も存在する。約830万人以上が中間予備層(aspiring middle)へと移行したとされており、これは一人当たりの月間支出額が約200万ルピア(2024年3月時点、日本円で約1.8万円)という中間層の定義ラインを下回る層の増加を意味する。特に、中間予備層では支出の55%以上が食費に充てられており、これは、いわゆる耐久消費財に手が届きにくい層が拡大していることを示唆している(※)。

このような消費構造の変化は、消費者が生活必需品においてもコスト意識を強める一方で、商品の選択において「意味」や「価値」をより重視する傾向を促している。日系企業をはじめとする多くの外資系企業は、高品質・高価格帯の商品ラインナップを展開することが多く、特にコモディティ化が進む商品カテゴリーにおいては、インドネシアの地場企業との競争において厳しい状況に直面している。

したがって、マーケターは、この変化する消費者に効果的にアプローチするために、価格設定の調整、提供価値の明確化、およびデジタルプレゼンスの強化を通じて適応する必要がある。このような市場状況下で成功を収めているサービスや商品の広告キャンペーン事例を以下に紹介する。

成功事例

1. ECサイト「Blibli」

インドネシアのEC市場は東南アジア地域において最も高い成長率を示している。Blibliはインドネシア発のECプラットフォームであり、市場規模では第4位に位置する。

Blibliは、他ECサイトと比較して商品価格は高めに設定されているものの、商品の信頼性や配送品質といった顧客体験の向上に注力している。インドネシアでは、多くの消費者がECサイトでの商品や配送トラブルを経験しているため、「失敗したくない」と考える顧客層から支持を集めている。

Blibliは、著名な歌手Yura・Yunitaの楽曲「Dunia Tanpa Tipu Tipu(偽りのない世界)」とのコラボレーションキャンペーンを実施した。このキャンペーンにより、オーガニックセッション数を前年同月比プラス104%獲得し、ECの主要顧客層である18歳から44歳のセグメントにおいては、Shopeeに次ぐ第2位のSOV(Share of Voice)を獲得することに成功した。

• 説明動画: https://www.youtube.com/watch?v=Toql0p5xKV8

2. ポカリスエット

毎年、ラマダンはムスリム(イスラム教を信仰する人々)にとって極めて重要な宗教的義務であり、約1ヶ月間にわたり夜明け前から日没まで断食を行う。ラマダン入り前の期間は年間で最大の商戦期となり、多くの企業が大規模なキャンペーンを展開する。

Amerta・Indah・Otsuka(大塚製薬のインドネシア法人)は、断食期間中の脱水状態(Bocor)になりやすいという課題に注目し、ポカリスエットの機能的価値を明確に訴求した。具体的には、サフール(Sahur:夜明け前、断食開始前に摂る食事)中にポカリスエットを摂取することで、サボテンのように体内に水分を保持しやすくなるという利点を強調し、競合商品であるミネラルウォーターとの差別化を図った。

このキャンペーンでは、1,300万人を超えるフォロワーを持つインフルエンサー、Fadil・Jaidiとその父親を起用した結果、大きな成功を収めた。

• 説明動画: https://www.youtube.com/watch?v=BB3BoXOp-NA

※ 出典:National Socioeconomic Survey (Susenas)、Indonesia Economic Outlook Q3-2024 LPEM FEB UI