第1回 エイジテックが切り開く超高齢社会課題解決
エイジテックとは、超高齢社会を対象としたデジタルイノベーションである。この技術の中核にあるのは、AI、AR/VR/XR、ビッグデータ、ロボット、センサーなどの革新技術である。これらのテクノロジーを活用したビジネス・イノベーションは、金融(Fin-Tech)、食品(Food-Tech)、睡眠(Sleep-Tech)など、多様な分野で起きているが、エイジテックは高齢者領域のイノベーションを指す。
エイジテックの進展により、超高齢社会での社会課題が解決し、高齢者を対象とする新たな革新的なサービスが生まれることが期待されている。
現在、エイジテックのスタートアップ事例が数多く生まれている。例えば、一人暮らしの老人の孤独問題を解決するコミュニケーションロボット、シニア女性のためのオンライン・フィットネスツール、高齢者の転倒リスクを事前に予知するバランス測定器、会話音声を通じて認知症、うつ病などを早期発見する音声サービスなど、それらの多くはデジタルテクノロジーを活用し、高齢者の困難を解消し、予防しようとするサービスである。
エイジテック・サービスは、医療、健康、ヘルスケア分野に多いが、必ずしもそこに留まるものでもない。高齢者の困りごとを助ける携帯アプリプラットフォームや、高齢者の金融資産をA Iで監視し詐欺被害を防止するサービス、簡単に遺言書が無料で作成できるアプリなど、コミュニティ分野、金融、法律サービスなども生まれている。
エイジテック分野のスタートアップ企業は国内外で多数生まれつつあるが、その中でもとりわけ米国とイスラエル企業の躍進が目立つ。紹介した事例の多くは、米国、イスラエル発のテクノロジーだ。現在、世界は第4次産業革命の真っ只中にあると言われている。本来、こうしたサービスは、世界で一番高齢化率が高い日本において必要なもので、我が国で開発すべきテクノロジーである。デジタル分野で遅れをとる日本にもいくつかのエイジテック事例は生まれつつあるが、その歩みは総じて遅い。
社会保障人口問題研究所の予測によると、2030年には日本の高齢化率は33%を超え、日本人の3人に1人が65歳以上という社会がおとずれる。かつて、高齢者はテクノロジーに詳しくない場合も多く、テクノロジーと高齢課題を結びつけることは困難であるという評価が一般的であった。しかし、今後の高齢者は団塊世代を先頭に、スマートフォンを使いこなし、デジタルリテラシーの高い人も増えてくる。こうした人々が増えてくることで、エイジテックを必要とする高齢者の潜在ニーズも高まってくるだろう。日本企業も積極的にこの領域にチャレンジすることが期待される。
エイジテックの全体構成