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榮枝 洋文

榮枝 洋文

株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表

海外現地法人のマネジメント歴18年(中国・広州/香港、北米・ロサンゼルス/ニューヨーク)。アサツーディ・ケイ現地法人ADK America (WPP Group)のCFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。ニューヨークの最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。

共著に『広告ビジネス次の10年』『2030年の広告ビジネス』(翔泳社)がある。

過去のFresh EYEコンテンツは下記から読むことができます。
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D2Cという言葉が持つかつての輝きが失われつつある矢先、フットウエアのNIKEが2019年より自社D2Cチャネルへの集中を行っていたが、今年Amazonチャネルでの直接卸売を復活させると発表した。

メガネの「Warby Parker」が見せる「医療×D2C」


■自社D2Cを宣言したNIKEがリテーラーにUターン

D2Cという言葉が持つかつての輝きが失われつつある矢先、フットウエアのNIKEが2019年より自社D2Cチャネルへの集中を行っていたが、今年Amazonチャネルでの直接卸売を復活させると発表した。このUターン決断は「自社販売か、他社リテーラー販売か」の二択思考ではない次元で、競争優位性がどこにあるのかの「儲け方」の変化だ。

 

■なぜWarby Parkerは黒字化できたのか

変化の別例として、D2Cの申し子として知られるメガネブランドの「Warby Parker(図1)」は、2021年の上場以来、赤字が続いていたが、2025年第1四半期に初の黒字決算を発表した。多くのメディア解説では、その要因を「スーパーのTargetとの提携を含むリテーラー店舗網の拡大」とする。ところが、この水平展開は表面的な「紙芝居」側の分析に過ぎない。NIKEやWarby Parkerが例が示すのは、「チャネルの所有と水平拡大」から「エコシステム(全体)の垂直統合」へと競争の軸をシフトさせた様子だ。

図1:Warby Parkerの店舗の様子(ニューヨーク) 出典:Warby Parker

■「紙芝居」で引き寄せ、「飴玉」で儲けるD2C事例

これらの例の本質的な変化要因は、彼らが2年以上の歳月をかけて地道に築き上げた、事業の「飴玉」への追求にある。

NIKEの場合ならば、Amazonの「ASIN(商品管理番号)」を自社商品への割り振りで偽造品を排除する、いわば「商品戸籍ID」の管理が進化している。今回NIKEは「オフィシャルベンダー」として復帰させるのは、Amazonの「ブランドゲーティング」という機能を活用し、販売者以外からの出品をシステムレベルでブロックさせ、ブランド価値の保護(向上)にある。

これは単なるスニーカーの水平拡販だけでなく、正規品購入者の「人のID」と「購入履歴商品ID」が一致すれば、偽造品を排除したリセール市場の信用拡大(プレミアムシューズの再販)の垂直接続(購買者の連鎖、購買の継続)に繋がる。

Warby Parkerの場合は、米国の医療保険への垂直エコシステムへの統合を地道に行った。米国においてメガネは単なるファッションアイテムではなく、「医療機器」としての側面が極めて強い分野であり、Warby Parkerはこの制度的背景を逆手に取った。彼らは自社276店舗の大部分に検眼医を常駐させ、単なるメガネ販売店から「総合ビジョンセンター」へと事業モデルを転換させた 。

この戦略の核心は、米国の巨大な保険産業への市場参入だ。「UnitedHealthcare」や「MetLife」といった巨大保険会社と提携し、企業保険の掛け捨て加入者に対して、有効利用可能なご近所店舗と位置づけることで、3,400万人以上の被保険者層にアクセスする道を開いた。保険が適用されれば、顧客は乱視や累進レンズのような高単価商品を選びやすくなり、結果として顧客単価(ARPU)は約43,000円(310ドル)という高い水準にまで引き上げている 。

かつて流行した消費財のD2Cが売り手側の「利便性の押し付け(軽い側データ)」として失速したのとは対照的に 、NIKEは厳格な商品ID、そしてWarby Parkerは規制の厳しい医療・保険という「重たい側データ」のエコシステムに自らを統合することで、持続可能な収益基盤を築いている。単に「売って終わり」ではなく、「サブスクの強制」でもない、消費者側にあふれる潜在的な価値に気づける事例だ。

メガネの「Warby Parker」が見せる「医療×D2C」


■自社D2Cを宣言したNIKEがリテーラーにUターン

D2Cという言葉が持つかつての輝きが失われつつある矢先、フットウエアのNIKEが2019年より自社D2Cチャネルへの集中を行っていたが、今年Amazonチャネルでの直接卸売を復活させると発表した。このUターン決断は「自社販売か、他社リテーラー販売か」の二択思考ではない次元で、競争優位性がどこにあるのかの「儲け方」の変化だ。

 

■なぜWarby Parkerは黒字化できたのか

変化の別例として、D2Cの申し子として知られるメガネブランドの「Warby Parker(図1)」は、2021年の上場以来、赤字が続いていたが、2025年第1四半期に初の黒字決算を発表した。多くのメディア解説では、その要因を「スーパーのTargetとの提携を含むリテーラー店舗網の拡大」とする。ところが、この水平展開は表面的な「紙芝居」側の分析に過ぎない。NIKEやWarby Parkerが例が示すのは、「チャネルの所有と水平拡大」から「エコシステム(全体)の垂直統合」へと競争の軸をシフトさせた様子だ。

図1:Warby Parkerの店舗の様子(ニューヨーク) 出典:Warby Parker

■「紙芝居」で引き寄せ、「飴玉」で儲けるD2C事例

これらの例の本質的な変化要因は、彼らが2年以上の歳月をかけて地道に築き上げた、事業の「飴玉」への追求にある。

NIKEの場合ならば、Amazonの「ASIN(商品管理番号)」を自社商品への割り振りで偽造品を排除する、いわば「商品戸籍ID」の管理が進化している。今回NIKEは「オフィシャルベンダー」として復帰させるのは、Amazonの「ブランドゲーティング」という機能を活用し、販売者以外からの出品をシステムレベルでブロックさせ、ブランド価値の保護(向上)にある。

これは単なるスニーカーの水平拡販だけでなく、正規品購入者の「人のID」と「購入履歴商品ID」が一致すれば、偽造品を排除したリセール市場の信用拡大(プレミアムシューズの再販)の垂直接続(購買者の連鎖、購買の継続)に繋がる。

Warby Parkerの場合は、米国の医療保険への垂直エコシステムへの統合を地道に行った。米国においてメガネは単なるファッションアイテムではなく、「医療機器」としての側面が極めて強い分野であり、Warby Parkerはこの制度的背景を逆手に取った。彼らは自社276店舗の大部分に検眼医を常駐させ、単なるメガネ販売店から「総合ビジョンセンター」へと事業モデルを転換させた 。

この戦略の核心は、米国の巨大な保険産業への市場参入だ。「UnitedHealthcare」や「MetLife」といった巨大保険会社と提携し、企業保険の掛け捨て加入者に対して、有効利用可能なご近所店舗と位置づけることで、3,400万人以上の被保険者層にアクセスする道を開いた。保険が適用されれば、顧客は乱視や累進レンズのような高単価商品を選びやすくなり、結果として顧客単価(ARPU)は約43,000円(310ドル)という高い水準にまで引き上げている 。

かつて流行した消費財のD2Cが売り手側の「利便性の押し付け(軽い側データ)」として失速したのとは対照的に 、NIKEは厳格な商品ID、そしてWarby Parkerは規制の厳しい医療・保険という「重たい側データ」のエコシステムに自らを統合することで、持続可能な収益基盤を築いている。単に「売って終わり」ではなく、「サブスクの強制」でもない、消費者側にあふれる潜在的な価値に気づける事例だ。

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