自治体職員向けに、仕事につながるヒントやアイデア、事例などを紹介する行政マガジンです。自治体運営における業務改善のヒントの提供や自治体向けに事業を展開したい民間企業をサポートします。
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Vol.67
神奈川県座間市×農業振興
“未来を良くする”視点で、既存の生ごみ減量対策が地域の食循環に発展。
持続可能な地域社会の発展のため、自治体においてはSDGsの様々な取り組みが進められています。今回は、生ごみの減量を農業振興のサイクルにつなげようと、官民連携のプロジェクトに取り組む神奈川県座間市の事例を紹介します。
家庭から出る生ごみを減らす目的で、平成8年度から生ごみコンポスト事業を続けている同市。市民が各家庭で生ごみを堆肥化させる取り組みで、市はコンポスト購入費用の75~90%を補助します。しかし、堆肥は各家庭で活用するため、庭のない集合住宅などに普及させにくいことが課題でした。
そんな折、県内の民間企業から、生ごみを活用し、都市部の農業振興のために連携したいという提案があったそうです。そこで、各家庭から集めた堆肥を用いて野菜を育て販売し、地域の食循環を推進する、2年間のプロジェクトがスタートしました。
初年度の参加定員は市内300世帯とし、希望者を募りました。資源対策課がバッグ型の「LFCコンポスト」を無償で貸与。参加者は、2カ月間コンポストにためた生ごみを1カ月かけて熟成させ、指定日に回収用の麻袋に入れて集積所に提出します。同課が回収し、企業が2次発酵や異物除去を行った堆肥を、農政課が農家に届けます。その堆肥でジャガイモを栽培し、参加者へ販売する予定です。これにより、地元産の食材が食卓に戻り、地産地消や食育に寄与することが期待されています。
「既存のコンポスト事業との大きな違いは、参加者のサポート体制です。初めて参加する方が多かったので、実施中に交流会を2回開催。参加者同士が悩みを共有し、業者から助言を受ける場を提供し、モチベーションの維持に努めました」と資源対策課の依田さんは語ります。
初年度の成果として、半年間で約3.8tの生ごみから約4㎥分(約1.2t)の堆肥が生成されました。「ジャガイモ栽培は、このプロジェクトに興味をもった農家さんに依頼しました。初回は販売できる量にはならないかもしれません。まずは参加した人たちに届けられたらと考えています」と農政課の曽根さん。また、2つの課が各々の役割を担いながら、企業とも円滑な協力体制を構築。さらに住民や農家とも密な関係性を保つことで、初年度は当初の目標通りに堆肥がつくられたそうです。
SDGsのために新たな事業を生み出すのではなく、既存事業を発展させる視点も重要だと言います。「多くの事業が“自分良し・相手良し・世間良し”の三方良しにもとづいているはず。そこに“未来良し”を加えると、SDGsにひもづいていくでしょう」と依田さん。
こう意識するだけでSDGsは身近な存在になり、多くの課題改善につながっていくのかもしれません。