企画制作部 プランニングチーム
森賀 純一
まず、前提として世の中的な若手の部類に入る世代ではないことをお伝えさせていただきます。広告業界に携わるようになって大体10年、プランナーとしてのキャリアが4年くらいなので、一般的には中堅社員という立ち位置かもしれません
広告業界と労働
まず、前提として世の中的な若手の部類に入る世代ではないことをお伝えさせていただきます。広告業界に携わるようになって大体10年、プランナーとしてのキャリアが4年くらいなので、一般的には中堅社員という立ち位置かもしれません(弊社的にはまだまだ青年の部類です) 。そのうえで『Fresh Eye』という連載のテーマに基づき、これからの広告業界を担っていく皆様に興味をもっていただける内容として「広告業界と労働」について考えてみました。
自分が本当に若手だったころと比較すると、広告業界における労働環境は格段に良くなったように感じます。実際に、OECDの統計によると日本の年間総労働時間平均は2022年で1,607時間、10年前と比べて158時間も減少しているそうです。業界だけの話ではないかもしれませんが、10年前はあまり耳にする機会がなかったワークライフバランスといった単語が市民権を得ていることからも、「勤勉な日本人」というパブリックイメージに基づく強迫観念的な労働信仰はほとんどなくなったといえるのではないでしょうか。とはいえ、コンペに勝利し、売り上げのコミットを達成しなければならない点に変わりはなく、手法や媒体、クリエイティブに関する知見もどんどんアップデートしなければならないので、インプットすべき事柄のボリュームはむしろ増え続けています。業務を通して行われていく強制的なボトムアップが減った分、自分の意志で効率的かつ能動的に成長していかなければならない今の時代の若者のほうがむしろ大変かも。広告という存在を本気で好きかどうかが試される時代なのかもしれません。
一言に「広告」といえど人によって解釈は様々だと思います。文字通り広く告げるものとして言葉尻を捉えることもできますし、もっと高尚な社会的意義を求めることもできます。何事も、ひとつのことを好きであり続けるのは非常に難しいです。だからこそ、各々で都合よく広告という存在を受けとめちゃったほうが、業界の人間として長く仕事と向き合えるはず。労働は決して楽しいことばかりではありませんが、広告業界や広告そのものに愛を持つ人間であり続けたいと思っていますし、仕事への愛をもった人たちで溢れた業界であってほしいと願っています。
最後に、自分の広告観に影響を与えた言葉を紹介します。TVCM黎明期に名を馳せたディレクター・杉山登志氏が最後に遺したといわれている言葉を借りるのであれば、広告とは“リッチ” であり“ハッピー” であり“夢をうること”なのだそうです(原文は異なります)。彼自身がどういった意図で記したものなのか、それこそ受け手側の都合で解釈せざるを得ませんが、横文字だらけの最先端の広告トレンドから業界を読み解くよりも、半世紀前に遺された一文の情緒に思いを馳せるほうが、広告業界における労働の本質や魅力や浪漫を見出せる気がしませんか。「夢をうる」という素敵な仕事が、広告業界なのです。