第7回 社員は身近なステークホルダー —不正を防ぐ社内風土—
女性活躍が政府の重要課題と位置付けられて久しいですが、「指導的地位に占める女性の割合を30%程度とする」という目標には、いまだ到達していない企業が多数あります。
企業からは、人材は急には育たないという人材不足の声が聞かれる一方で、女性自身が管理職になりたがらないのだということもよく耳にします。果たして本当にそうなのでしょうか。
確かに、残業が増える、イレギュラーな働き方を求められるから管理職にはなりたくないという女性もいらっしゃいます。しかしそもそも、管理職は残業が多くて、イレギュラーな働き方をしなければならない、という前提がおかしいと思いませんか。
昨年、品質検査におけるデータ改ざんが発覚したある企業で、特別調査委員会の報告書が作成されました。実際にデータ改ざんが行われていた現場に対し、「本件問題の要因は何だと思いますか」と質問したところ、「コンプライアンスに関する未成熟な社内風土」(55.5%)という回答の次に多かったのが、「厳しすぎる又は無意味な顧客の仕様」(44.3%)というものでした。営業の方は、仕事を勝ち取るために、少しくらいの無理難題ならばと引き受けてしまうのでしょうが、実際の業務を担当する現場は、人手不足、予算不足の中、追い詰められていく、結果として、現場担当者が、無意味だと思う検査を行わずに、データ改ざんが常態化していくということだったのだと思います。
もちろん、契約は相手方との約束ですから、無意味だからと一方が勝手に内容を変えてよいはずはなく、検査データの改ざんをした現場に100%、非はあります。しかし、そこに至る過程に何があったのか、どうすればこういった不正を防ぐことができたのかを考えなければ、再発防止にはつながりません。
かつては「お客様は神様です」という時代がありました。しかし今は、顧客の満足度を高めるために、自社の従業員に疲弊するような働き方を強いる企業は、アウトです。もちろん突発的な事象に対して、素早く対応をしたほうが顧客には感謝されますが、それが当たり前と、社内でも、また相手先に対しても、要求してしまうと、労働環境の改善にはつながらず、結果として女性の活躍も実現していかないのではないでしょうか。
こうしなければならない、という働き方の押し付けを止めること、一人ひとりが働きやすい環境をどう構築できるかをコミュニケーションをとりながら、考えていくこと、そうやって「お互いさま」の文化が社内に根付いていくと、管理職に挑戦してみようという女性も増えていくのではないかと思います。
顧客だけを見て、社内を見ないのはNGです。従業員の労働環境の悪化、モチベーションの低下だけではなく、上述の企業のように、不正の引き金ともなりかねません。一番身近なステークホルダーである従業員の満足度を高めることが、コンプライアンスの一丁目一番地だと思います。