第2回 一方的に話し続けていませんか?パワハラと指導の境界線
今回のテーマはパワハラです。「最近の若者はすぐにパワハラと騒ぐから、注意がしづらい」等というお声を耳にしますが、これはパワハラとは何かを正確に理解していないからかもしれません。
パワハラの法律上の定義は、「①優越的な関係を背景とした、②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、③就業環境を害すること(身体的若しくは精神的苦痛を与えること)」です。この定義からいえば、「業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な指導」はパワハラには該当しません。セクハラと違って、相手がパワハラと言えば、全てパワハラと認定されるわけではないのです。だからこそ、管理職は何がパワハラに該当し、何が適切な指導に当たるのかを理解しておく必要があります。
かつて担当したパワハラ裁判で、裁判所から、「どうしてそんなこともできないのか」という上司の言葉が(他の言動とまとめて)パワハラと認定されたことがありました。よく使う言葉ではないかと思いますが、裁判所は、部下がミスをしたときに上司は指導をすることが仕事である。そのためには、なぜ失敗をしたのか、同じミスを繰り返さないためには何を改善したらいいのかを本人に考えさせることが必要であるところ、「どうしてそんなこともできないのか」という言葉は、自分のイライラした感情をぶつけているだけであって、指導ではない、というものでした。
ここから読み取れることは、双方向のコミュニケーションがポイントだということです。
部下がミスをした場合には、「今回のミスの原因は何だと思うか」「どうやって改善したらいいと考えているか」と相手の言い分を聞きながら、適切な言動が取れるように導いていくことが、いわゆる「指導」であり、対して、自分が要求したレベルの仕事をしていない部下に向かって、一方的に不満の感情をぶつける行為はパワハラと認定される可能性が高いということです。「大体お前は~」「そもそも~」等と今回のこととは直接関係のないことも持ち出して、長時間、相手のダメなところ(と自分が思っていること)を指摘するような行為も同様です。
イライラした感情をぶつけられた部下は、謝る以外できなくなりますので、部下を指導している(と自分では思っている)ときに、気づいたら、部下が「すいません」としか発言していない、自分が一方的に10分間話し続けている、等という状況になっていたら、パワハラの危険信号です。
どんな時もまずは相手の発言に耳を傾けるという姿勢をとっていれば、パワハラと認定される確率はグッと下がると思いますよ。