埼玉県立浦和高校卒業。一橋大学社会学部卒業。1981年4月に㈱旭通信社*<当時>に入社。(*その後、合併を経て、(株)アサツー ディ・ケイに社名変更。現在のADKグループ)。入社時よりコピーライターとして活躍。クリエイティブ・ディレクター経て、クリエイティブ計画局長、クリエイティブ戦略本部長として、200名を超えるクリエイティブ部門の人事・組織・研修・ビジョン策定等を担当。在職時に、日本広告業協会、クリエイティブ委員会・海外交流委員会の委員を務める。2009年1月(株)博報堂DYメディアパートナーズに移籍し、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターに就任。現在、多摩美術大学教授で、広告論/マーケティング論/メディア論を教える傍ら、コミュニケーション・ラボ代表を務め、コミュニケーション・コンサルタント、クリエイティブ・ディレクターとして活躍中。日本広告学会(常任理事・デジタルシフト研究委員会委員長)、日本広報学会、日本マーケティング学会、公共コミュニケーション学会に所属し、WOMJ<クチコミマーケティング協会>理事を務める。2004年6月にはカンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員を務めた。
幾つかのアワードを紹介して来たこの連載も第12回目を迎えて、いよいよ最終回である。筆者は連載の第1回、第2回、第3回を執筆したのだが、最終回も担当させていただくこととなった。
ビジネスの役に立つ「アワードとの向き合い方」。
幾つかのアワードを紹介して来たこの連載も第12回目を迎えて、いよいよ最終回である。筆者は連載の第1回、第2回、第3回を執筆したのだが、最終回も担当させていただくこととなった。
筆者のアワードに対する基本的なスタンスは、「アワードに参加し勉強もすることで、自分自身のビジネスの役に立てるべし」ということだ。アワード・マニアになる必要は、まったく無い。アワードのことを幾ら知っていても、それが実際のビジネスになんらか寄与しないようであれば、あまり意味がない。
そういう意味で、注目して挑んだり学んだりするアワードの数は、多過ぎない方が良いと思う。例えば、国内賞1つと国際賞1つ、合わせて2つくらいに絞って向き合うことをお勧めする。もちろん、絞るためには、世の中にどんなアワードがあるのかを知り、どれに絞るべきなのかを考える必要があるので、今回の連載もお役に立てたはずだ。
連載の第1回目で、アワードにチャレンジする意義は、大きく2つある、と書いた。その2つとは、①受賞作が、どこが良くて受賞に至ったのかを考え、分析し、それ以降のご自身のビジネスのヒントを探すこと。②受賞にまで至ることで、携わった個人の、チームの、会社のレピュテーション(評判)を高めてくれる、ということ、だ。
今回は特に①について、考えてみたい。世界でいちばん有名な国際賞であるカンヌライオンズは、30の部門があり、ブロンズ以上は全応募作の3%程度と超難関だが、それでも800点以上ある。アワード・マニア的な人の中には、800余点のうちの幾つ知っているかを競っているような人も存在するが、たとえ100点知っていても200点知っていても、それだけでは何の価値もない。
筆者自身が毎年やっていることは、ゴールド以上の受賞作、なかでも複数部門で受賞している話題作の中から、20点程度を選び、それらから出来るだけ深く学ぼうとすることだ。事例ビデオを何回も見て、資料も読み、ネット記事なども参考にして、コアとなる発想は何か、今後のプランニングのヒントになりそうなことは何か、と必死に考える。できれば、ヒントを3つくらいのポイントにまとめるようにしている。
1つだけ例を挙げよう。『Feaeless Girl(恐れを知らぬ少女)』という事例をご存じだろうか?2017年のカンヌライオンズで4部門のグランプリを獲得した、超話題作である。“あー、あの少女像を使ったやつだろ”と概要を思い出した方もいるかもしれない。でも、筆者が知る限り、何の会社が、どういう商品やサービスのために実施したものなのかを把握してない人が、ほとんどなのだ。これは、米国の証券会社が、女性が活躍している会社の株だけを集めた“SHE”という株式ファンドのプロモーションのために、「もっと女性のパワーを知ろう」といったメッセージを込めたものだ。この事例は大きな反響を呼び、“SHE”の売り上げも347%の増加を記録したという。(詳しくはこちらの筆者執筆のウェブ記事で読める。)
今回の連載で、アワードについてだいぶ視野を拡げてもらえたと思う。他にもいろいろとサーチして、ご自身の業務内容や、“なんか興味がある”といった感覚的なものも含めて、1つか2つに絞って、ぜひ深く、深く学んで、ビジネスの役に立つヒントをつかみ取っていただきたい。
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※写真はいずれもカンヌライオンズ2024で筆者が撮影したもの