チャレンジする価値がある
新しいアワード 新しいカテゴリー

2024年から新シリーズとして「チェレンジする価値がある 新しいアワード 新しいカテゴリー」を連載します。既存のアワードの新しいカテゴリーや、新たなアワードが次々と誕生している今、アワードの変化を見ながら、新しい広告の方法や価値を見出すシリーズ企画です。

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佐藤 達郎

佐藤 達郎

多摩美術大学教授 / コミュニケーション・ラボ代表
多摩美術大学教授 / コミュニケーション・ラボ代表

埼玉県立浦和高校卒業。一橋大学社会学部卒業。1981年4月に㈱旭通信社*<当時>に入社。(*その後、合併を経て、(株)アサツー ディ・ケイに社名変更。現在のADKグループ)。入社時よりコピーライターとして活躍。クリエイティブ・ディレクター経て、クリエイティブ計画局長、クリエイティブ戦略本部長として、200名を超えるクリエイティブ部門の人事・組織・研修・ビジョン策定等を担当。在職時に、日本広告業協会、クリエイティブ委員会・海外交流委員会の委員を務める。2009年1月(株)博報堂DYメディアパートナーズに移籍し、エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターに就任。現在、多摩美術大学教授で、広告論/マーケティング論/メディア論を教える傍ら、コミュニケーション・ラボ代表を務め、コミュニケーション・コンサルタント、クリエイティブ・ディレクターとして活躍中。日本広告学会(常任理事・デジタルシフト研究委員会委員長)、日本広報学会、日本マーケティング学会、公共コミュニケーション学会に所属し、WOMJ<クチコミマーケティング協会>理事を務める。2004年6月にはカンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員を務めた。

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前回に引き続いて、業界で最も影響力の強いカンヌライオンズ(旧カンヌ国際広告祭)、その30の部門から、幾つかの注目の部門をご紹介しよう。カンヌライオンズは10年以上、“広告からクリエイティビティへ”、“広告特化からビジネス一般へ”の流れの中にある、とお伝えしたが、今回もその流れの中にある部門を紹介する。

連載第3回 カンヌライオンズの今、注目の部門とは? ②

前回に引き続いて、業界で最も影響力の強いカンヌライオンズ(旧カンヌ国際広告祭)、その30の部門から、幾つかの注目の部門をご紹介しよう。カンヌライオンズは10年以上、“広告からクリエイティビティへ”、“広告特化からビジネス一般へ”の流れの中にある、とお伝えしたが、今回もその流れの中にある部門を紹介する。

まずは、「クリエイティブBtoB部門」だ。Business to Businessを表すBtoBを標榜するこの部門は、“プロフェッショナルが、ビジネスのために購入するプロダクトやサービス”に関する施策を対象としたものであり、テレビCM活用等のいわゆる広告ではないものが多い。

創設年である2022年のグランプリ受賞作を紹介する。SHERWIN-WILLIAMS(シャーウイン・ウィリアムズ)という
米国のペイントメーカーによる“SPEAKING IN COLOR”だ。

シャーウイン・ウィリアムズは、塗料やコーティング材を扱い、主な顧客は建築関連企業や建築家になる。“SPEAKING IN COLOR”は、建築家や発注者が、自分のイメージする塗料の色を、スマートフォンに話しかけるだけで得られるというAIを活用したシステムだ。例えば、「クリアなクリスタルで、カリビアンな感じ、水の雰囲気(Crystal clear, Caribbean, Water)」と音声入力すれば、幾つかの候補色が提示される。さらに、「少し明るく(A little brighter)」とか「少しだけ青味を足して(Blend in a bit more blue)」など、細かく感覚的な言葉を加えることで、発注者自身のイメージに近いカラーが得られる。”広告ではない“ところで発揮された、新しいタイプのクリエイティビティと言えるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=zZoOhARS8j8

次に、「クリエイティブ・コマース部門」だ。この部門は、オンライン/オフラインでの商い、支払いに関するソリューション、取引ジャーニーについての、イノベーティブでクリエイティブなアプローチに関するものである。
2023年のゴールドから、興味深い事例をご紹介しよう。オレオ・クッキーの「Oreo Codes」だ。100年の歴史を持つオレオは以前から牛乳に浸して食べることを推奨していて、“オレオと言えばミルク”という認識は一般に広がっている。そんな中でオレオが目を付けたのが、牛乳パックに付けられているバーコードだ。バーコードを仔細に見ると、まるで様々なタイプのオレオ(オリジナルとか薄いタイプとか2倍の厚さとか)で出来上がっているように見える、というのが発想の原点だ。3つの主要なスーパーのチェーンと協力して、1,000以上の牛乳パックのバーコードに対応。ユーザーがスマートフォンでバーコードをスキャンすると、ウェブ上でオレオ・クッキーを割引で買えるようにした。“オレオと言えばミルク”を“牛乳と言えばオレオ”に変換し、新しい買い方を提案したクリエイティビティが斬新だ。

https://www.youtube.com/watch?v=iL325g1OBKk

もう1つ、比較的古くからある部門だが、「チタニウム部門」(2003年創設)についても簡単に触れる。この部門は、“業界の新しい方向性を示し、前進させる、挑発的で、境界を破る、羨望を抱かせる作品を評価”する。毎年、話題作、問題作が表彰されるので、この部門も、見逃せない。


さて、次回からは別々の筆者の方が、別々のアワードについて、それぞれ紹介して行く、という。私自身も読者として、楽しみにしていく連載になりそうだ。ご自身のクリエイティビティの新たな発揮先を模索してみては、いかがだろうか。

事例ビデオやテレビCM等の動画系は、会場内のコンピューターで視聴できる。

ビーチサイドでは、ネット系企業独自のスペースがいろいろと。カンヌライオンズ公式。

カンヌライオンズでは、一般参加者も赤絨毯を踏みしめて、贈賞式参列へ向かう。

(写真はいずれもカンヌライオンズ2023で筆者が撮影したもの)

連載第3回 カンヌライオンズの今、注目の部門とは? ②

前回に引き続いて、業界で最も影響力の強いカンヌライオンズ(旧カンヌ国際広告祭)、その30の部門から、幾つかの注目の部門をご紹介しよう。カンヌライオンズは10年以上、“広告からクリエイティビティへ”、“広告特化からビジネス一般へ”の流れの中にある、とお伝えしたが、今回もその流れの中にある部門を紹介する。

まずは、「クリエイティブBtoB部門」だ。Business to Businessを表すBtoBを標榜するこの部門は、“プロフェッショナルが、ビジネスのために購入するプロダクトやサービス”に関する施策を対象としたものであり、テレビCM活用等のいわゆる広告ではないものが多い。

創設年である2022年のグランプリ受賞作を紹介する。SHERWIN-WILLIAMS(シャーウイン・ウィリアムズ)という
米国のペイントメーカーによる“SPEAKING IN COLOR”だ。

シャーウイン・ウィリアムズは、塗料やコーティング材を扱い、主な顧客は建築関連企業や建築家になる。“SPEAKING IN COLOR”は、建築家や発注者が、自分のイメージする塗料の色を、スマートフォンに話しかけるだけで得られるというAIを活用したシステムだ。例えば、「クリアなクリスタルで、カリビアンな感じ、水の雰囲気(Crystal clear, Caribbean, Water)」と音声入力すれば、幾つかの候補色が提示される。さらに、「少し明るく(A little brighter)」とか「少しだけ青味を足して(Blend in a bit more blue)」など、細かく感覚的な言葉を加えることで、発注者自身のイメージに近いカラーが得られる。”広告ではない“ところで発揮された、新しいタイプのクリエイティビティと言えるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=zZoOhARS8j8

次に、「クリエイティブ・コマース部門」だ。この部門は、オンライン/オフラインでの商い、支払いに関するソリューション、取引ジャーニーについての、イノベーティブでクリエイティブなアプローチに関するものである。
2023年のゴールドから、興味深い事例をご紹介しよう。オレオ・クッキーの「Oreo Codes」だ。100年の歴史を持つオレオは以前から牛乳に浸して食べることを推奨していて、“オレオと言えばミルク”という認識は一般に広がっている。そんな中でオレオが目を付けたのが、牛乳パックに付けられているバーコードだ。バーコードを仔細に見ると、まるで様々なタイプのオレオ(オリジナルとか薄いタイプとか2倍の厚さとか)で出来上がっているように見える、というのが発想の原点だ。3つの主要なスーパーのチェーンと協力して、1,000以上の牛乳パックのバーコードに対応。ユーザーがスマートフォンでバーコードをスキャンすると、ウェブ上でオレオ・クッキーを割引で買えるようにした。“オレオと言えばミルク”を“牛乳と言えばオレオ”に変換し、新しい買い方を提案したクリエイティビティが斬新だ。

https://www.youtube.com/watch?v=iL325g1OBKk

もう1つ、比較的古くからある部門だが、「チタニウム部門」(2003年創設)についても簡単に触れる。この部門は、“業界の新しい方向性を示し、前進させる、挑発的で、境界を破る、羨望を抱かせる作品を評価”する。毎年、話題作、問題作が表彰されるので、この部門も、見逃せない。


さて、次回からは別々の筆者の方が、別々のアワードについて、それぞれ紹介して行く、という。私自身も読者として、楽しみにしていく連載になりそうだ。ご自身のクリエイティビティの新たな発揮先を模索してみては、いかがだろうか。

事例ビデオやテレビCM等の動画系は、会場内のコンピューターで視聴できる。

ビーチサイドでは、ネット系企業独自のスペースがいろいろと。カンヌライオンズ公式。

カンヌライオンズでは、一般参加者も赤絨毯を踏みしめて、贈賞式参列へ向かう。

(写真はいずれもカンヌライオンズ2023で筆者が撮影したもの)