連載第1回 アワードに挑む、アワードに学ぶ。
広告業界には、本当にたくさんのアワード(賞)がある。広告会社のクリエイティブ部門で人生の大半を過ごして来た自分にとっても、若い頃からその存在は、無視できない、重要なものだった。
一方で、アワードに否定的な意見を持つ人達も、一定数、存在する。いわく、「アワードばかり狙うと、商品やサービスの価値を上げようとする、本来の広告コミュニケーションとしての取り組みがおろそかになる」という指摘だ。
その指摘通りの行動が見られるとしたら、それは徹底的に避けるべきものだろう。しかし実際には、多くのアワードは、“本来の広告コミュニケーションとしての取り組みがおろそか”なものでは、到底受賞できない。広告コミュニケーションのプロ中のプロと認められた人達が、商品やブランドの価値を上げるものかどうか?という視点で審査をするからだ。そうではないアワードは、アワード自体が生き残れない。そういう意味で、それらは、けっしてただのビューティ・コンテストではなく、”賞のための賞“ではない。
アワードにチャレンジする意義は、大きく2つある。1つは、受賞作が、どこが良くて受賞に至ったのかを考え、分析し、それ以降の自分達の日々のビジネスに活かせるヒントを探し、学ぶことだ。その際、ただ受賞作を眺めていても、本来的な意味での“学び”は得られない。まずは自分達でチャレンジすることで、実感を持って、本当の意味で学ぶことができる。受賞できなかった時は何故受賞できなかったのか、受賞できたとしても何故さらに高位の受賞に至らなかったのか、を他の受賞作と比べることで、次回以降のヒントを探るのだ。
もう1つは、その受賞作に携わった、個人の、チームの、会社のレピュテーション(評判)を高めてくれる、ということだ。広告ビジネスにおいて、クライアント側は何をもって発注先の会社やチームや個人を選ぶのだろうか。あるいは、何をもって相手側の(我々の)提案にGOを出すのだろうか。我々のビジネスは、完成品をつくって買ってもらうビジネスではない。例えばテレビCMを例に取れば、「企画コンテ」と呼ばれる8コマ漫画のようなものによって、クライアント側は完成品であるテレビCMを想像し、担当者を信頼し、OKを出し発注しなければならない。その時に、何をもって、その担当者やチームを信頼するのか?アワードの受賞歴を含むレピュテーションは、信頼の大きな要素になり得る。
アワードは、世界に日本に、数多くあり、またアワード自体が進化を続け、多くの新しいカテゴリーも登場している。そのすべてにチャレンジをすることは難しいし、日々の業務もある中で、実際的には不可能だろう。この連載では、そうしたものの中から、皆さんにとって“チャレンジする価値がある”と、編集部が考えたものを紹介して行く、という。
継続的に読んでいただき、ご自身、チーム、会社にとって、チャレンジする価値があると思われるアワードやカテゴリーに、ぜひ挑んでいただきたい。
(写真はいずれもカンヌライオンズ2023で筆者が撮影したもの)