株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
海外現地法人のマネジメント歴18年(中国・広州/香港、北米・ロサンゼルス/ニューヨーク)。アサツーディ・ケイ現地法人ADK America (WPP Group)のCFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。ニューヨークの最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。
共著に『広告ビジネス次の10年』『2030年の広告ビジネス』(翔泳社)がある。
「キッズ向けコスメ」という、新しいセグメントが日本でも登場している。「ニフティキッズ」の調査によれば、53%が「普段からメークをしている」と回答しており、市場拡大の兆しがみえる。
キッズコスメ市場の成長とリスク
「キッズ向けコスメ」という、新しいセグメントが日本でも登場している。「ニフティキッズ」の調査によれば、53%が「普段からメークをしている」と回答しており、市場拡大の兆しがみえる。ただし日本での現状は「お化粧ごっこセット」に近い商品が中心で、実際にコスメ売り場に子どもたちが群がるという状況にまでは至っていない。
8~12歳の子どもにあたる「Tween(トゥイーン)」世代に向けた市場は、米国ではコスメ小売業の「Sephora」が2023年に「Sephora Kids」として開拓して以降、同業の「Ulta Beauty」を始めとした各ブランドが参入し、急速に拡大している。年間5千億円以上の市場規模であり、その伸び率はオトナを上回る(図1)。

出典)CBS News
気をつけておきたいのは、アンチエイジング成分など薬効を含む製品について、子どもたちへの使用を想定した法的規制(安全性ガイドライン)が整備されていない点だ。実際に、アンチエイジング化粧品を利用した子どもが肌トラブルを起こす事例も報告されている。
さらに、パッケージは可愛らしい「映える」デザインが優先され、利用方法やリスク表示が不十分なケーズも目立つ。SNS上の「スキンフルエンサー」に影響を受けた子どもが購買意欲を持ち、親が購入を後押しする構図も広がっている。
米国ではカリフォルニア州にて「18歳未満へのアンチエイジング化粧品販売禁止法案」がまだ審議中の段階であり、日本においてもメーカーや小売事業者が利益優先ではなく、SNSでの煽動や販売姿勢に一層の配慮を求められる状況だ。参考となる報道特集動画を以下に添える(英文字幕付き)。
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Part1:「セフォラキッズ」問題調査:スキンケアブランドが10代前半の子供たちに商品を販売して数十億ドルを稼ぐ方法
2025年5月26日 CBS NEWS
Part2:「セフォラ・キッズ」ソリューションの調査:5年生が、未成年者へのアンチエイジングスキンケア製品の販売を規制するカリフォルニア州法案を調査
2025年5月26日 CBS NEWS
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さらに米国では減量薬「GLP-1」にテニス女王だったセリーナ・ウィリアムズ氏が顔だけでなく処方の実演での広告が登場したり、日本でも米国の一部地域で合法とされるサプリメントの「THC」を国内に持ち込んだ騒動が発生したり、「境界線」が見えづらくなっている。特に「効能」が強い商品は、Z世代のお小遣いではなく、親世代の資金が飛びつくようにプロモーションされている。広告出稿側や事業主側は、合法のラインではなく倫理の軸で事業を考えたい。