AirbnbとUber、WeWorkのシェアリング事業が秘める社会的価値
■ビジネスモデルから見える企業姿勢の違い
Airbnbは一般民家、Uberは一般自家用車、WeWorkは一般ビル・オフィスの共有を促し、シェアリングの概念を広げて来た代表選手だ。
AirbnbとUberは自社在庫資産を持たず、エンドユーザーの利用をアシストし、資産の持ち主側に販売支援を行うモデル。一方WeWorkは、ビルオーナーからスペース在庫を借り上げ、内装に投資をした上でシェアリング・オフィスを利用ユーザーに販売する、自社出資が先行するモデルだ。借り上げリスクを先行で取る事で、高利益で販売コントロールができる旨味を見込んでいた。
AirbnbとUberが目指すのは、民家の持ち主や個人ドライバーのスモールビジネスを支援する(広げる)プラットフォームの構築。これに対してWeWorkのモデルは、借り上げによるビルオーナーから在庫がいったん手離れしているので、資産の持ち主側と利用ユーザーとの繋がりが薄く、プラットフォームとしての価値は小さい。
■法改正の追い風による、世界中どこでもの「信用通貨」
「信用ある人には貸す・ない人には貸さない」という判断は、金融だけでなく、不動産(住居)やその他の産業にも存在している。Airbnb経由の信用口座があるなら、Uber経由なら、世界中のどこでも部屋を借りたりクルマに乗ったりできる「信用」が得られる。ビジネスオーナーにとっては、利用ユーザーによる登録情報と「いいねやレビュー」がプラットフォームにおける信用価値となる。WeWorkのモデルでは、世界中どこでも賃貸、の信用価値が作りにくい。
参考までに、この3社の2023年末の最終純利益額はAirbnbが約6,700億円(2023年レート換算)、Uberが約2,600億円。WeWorkは約4,500億円の負債保証の破産申告と再建計画へ向かったのは発表のとおりである。
AirbnbやUberのモデルは、日本での「民泊新法の施行」や「ライドシェアの議論」などの法規制緩和のほうへ向かう流れを作った。これは他の先進国・都市でも同様。むしろ未検討の国・都市の数の方が多く、大きな需要がまだまだ埋もれている。
法規制の緩和により宿泊ホテルやタクシーの不足が解消されたとき、恩恵を受けるのは利用ユーザーだけではない。新・スモールビジネスを支援する自治体や国での市場が増えれば、納税額も比例して増える。つまり、新たな税収の源泉をオンラインで自治体の自動代行するという社会的価値を加えることになる。Amazonが「ふるさと納税」に価値を作り始めたのも気付けるところだ(別例:Airbnbのシティーポータル)。
現法令と新概念との棲み分けをし、既存事業主(ホテルやタクシー業)を守りつつ、これまで存在しなかった「世界中どこでも」の価値を「B2G(Government:政府)」にもたらせる。日本における円安時期とは、見方によっては、このような新しい流入価値や環境を取り入れられる時期かもしれない。