ストラテジスト
東京、ロンドン、パリ。3つの都市で、マルチナショナル・クリエイティブエージェンシーのストラテジックプランナーとして20年ほど勤務。
異なる文化をつなぐコンサルタント。
ストラテジスト
東京、ロンドン、パリ。3つの都市で、マルチナショナル・クリエイティブエージェンシーのストラテジックプランナーとして20年ほど勤務。
異なる文化をつなぐコンサルタント。
買い物をしていて最近目についたものがある。「Furi Furi(フリフリ)」というふりかけ。パッケージにカタカナで「フリィフリィフリィ」と書いてあり日本からの輸入品かと思ったが、日本製品にしてはちょっと雰囲気が違う。手に取ってみると、胡麻とブルターニュ産海藻入り、フランス産の原料で添加物を一切使っていない、初めてのメイド・イン・フランスのFurikaké(ふりかけ)と書いてある。
そもそもフランスには日本のように白いご飯を食べる習慣はなく、ふりかけのようなものもない。「フリカケ」と言われても相当の日本好きでない限り知らないもの。そこで、Furikaké(フリカケ)の下に「風味があって、塩の代わりに使える」と書いてある。フランスには、好みに合わせて食べるときに食事に塩をかける習慣はある。一方で、塩分の取り過ぎはフランスでも健康に良くないと言われている。日本の使い方を押し付けるのではなく、フランスの食習慣に合った、肉や魚、野菜にふりかける塩の代替品としてのフリカケのポジショニングを見つけたようだ。
さらにパッケージの後ろ面をみると、アピールポイント満載。
1) このフリカケの使い方・食べ方を3ステップで紹介(図解付き)。「本当の日本人がやるように」というポイントを強調。
2) 塩に比べての優位性をアピール。塩分控えめ、栄養分たっぷり、日本人シェフが考えたレシピ等、舌にも身体にもおいしいを強調。
3) 原材料リストは、フランス産のもの、メイド・イン・フランスを強調。
4) 摂取できる栄養分(鉄分、カルシウム、ビタミンや食物繊維)と悪いもの(添加物や保存料、グルテンなど)は入っていないことをリストアップ。
5) このフリカケを使ったレシピ集へアクセスするためのQRコード。
6) 売上の1%を子どもへの食育を啓蒙するチャリティーへ寄付していることをアピール。
7) パッケージは全てリサイクル可能(紙とプラスチック)かつ紙素材は環境持続性を守っている森の木から作ったものを使用していることを明記。
対象としている生活者のイメージが明確に浮かび上がってくる。つまり、パリのような大都市に住む、食に対する意識、環境意識の高い人である。
母親が日本人で東京に住んでいたこともあるというフランス人の女性がアイディアを思いつき、栄養士のバックグラウンドを持つフランス人女性と組み、フランスで20年以上レストランを経営している日本人シェフと現役の栄養士をチームに加え、クラウドファンディングを通して2022年にFuri Furiを発売した、というのがブランドストーリー。高級デパートの食品売り場や大手スーパーなどにも取り上げられつつある。
フランス語訳された日本のマンガが普通の本屋に並び、大抵のスーパーで「すし」を家で作れるセットを買うことができるほど、日本文化ブームは裾野を広げながら続いている。ただ以前のような日の丸、侍、刀、北斎、着物、Kawaii(かわいい)キャラというエキゾチックな東洋の世界感を押し出して好奇心や興味をそそるよりも、最近ではもっとフランス人にも共感できる洗練された良質なもの、センスの良いもの、健康的なものといった切り口で打ち出した、フランス人プロデュースの製品やブランド、サービス、店舗が増えている。Furi Furiも日仏バランスが上手くいっている、成功例と言えるのではないか。
<参照サイト>
https://www.pour-nourrir-demain.fr/furifuri-la-revolution-furikake-made-in-france(写真掲載元)
https://labonnevague.com/2023/11/03/furifuri-lalternative-au-sel-la-plus-goutue-qui-soit/