Open AI/ChatGPTをB2B視点で考える
ChatGPTを試して「これができる! あれもできた!」というユーザー体験記が賑わうが、Googleとの機能対比や、人間との仕事対比で終わってないか。ここではB2B事業者目線でどう儲けるのかを、MicrosoftがOpen AIに出資した1兆円規模の出資を例に考えてみる。そのリターン先はどこなのか。
OpenAI社からのChatGPTの技術(ライセンス)はMicrosoft Azure(クラウド)の営業ツールとしての客寄せにすぎず、その向こう側に飴玉がありそうだ。日本のテック系企業も「Open AI/ChatGPTを採用」とする話題狙いの契約は、B2「C」側に偏っており、「実験・お遊び」程度で終わる可能性が大きい。
B2Bで大企業がChatGPT(等)を採用の場合、顧客サービスのCRMなどの営業機能を下支えするインフラ土台として「詐欺検出アルゴリズム・セキュリティ」「コンプライアンス・データプライバシー機能」「ESGを含めた非財務情報」などが完備されていて、その上にまるっと大規模言語モデル(AI)で包括できるクラウドプロバイダー事業主が求められる。
この「B2Bの規範」がMicrosoftの得意技だ。最低でも「Office365スイート(Word、PowerPoint、Excel、Outlook、Teamsのエンタープライズ・サブスク)」でのChatGPT合作は想像がつくが、各産業別(バーティカル)サービスへの応用が鍵だ。
■事業の垂直の繋がり たとえば「医療機関向け」では、2021年に約2.2兆円で買収した音声認識技術AIの「Nuance Communications」がある(図)。米国医師が毎日2時間以上とも言われる電子カルテ作成時間や、診療の記録とその解析および臨床記録の文書化がNuance+ ChatGPTで自動化されれば、医師のデスクワークの時間は一気に短縮され、医師不足の一助と期待される。
Nuance 社の技術は病院機関向けB2Bであり、Open AIの医療産業への転用にはすでに55万人以上の医師がB2BユーザーとしてMicrosoftの中に存在している状態だ。極例としてOffice365で利益が出なくとも、異次元の医療サブスクサービスで大きな利益(社会貢献)ができれば、と考えるのが、MicrosoftとOpen AIの座組におけるビジネスモデルの一例だ。
さあ、この連想ができればMicrosoftが2022年に7.9兆円という異例の巨額投資で買収発表したゲーム会社の「Activision Blizzard」とChatGPTの相性も容易に想像がつく。さらにMicrosoftの向こう側には「ゲーム」を待望するNetflixも「Microsoftガーデン入り」しているので、CTV広告市場も応用の視野に入る。Microsoftを例にAI投資は、単発アプリ次元の事業発想ではない「事業の垂直つながり」のヒントとしよう。