ソリューションユニット フェロー/
ひと研究所 所長
2009年ビデオリサーチ入社。広告会社や広告主をクライアントとしたリサーチの企画・分析部門や、若者研究チーム参加を経て「ひと研究所」に参画し、 2024年より現職。「生活者のメディア行動」をテーマに研究・発信活動を行いながら、クライアント個別課題の調査実施・分析に携わる。修士(社会学)、専門社会調査士。
有料定額制の動画配信サービス(以下:SVOD)は、ここ数年で急速に普及し、今や生活者の日常に根付いたサービスになっています。SVOD利用率の推移を見ると、2020年に36%だった利用率は、2025年には61%にまで上昇しています。
有料動画配信サービス別のユーザー特性・視聴行動の違いを探る
■SVOD利用の拡大と広告媒体化
有料定額制の動画配信サービス(以下:SVOD)は、ここ数年で急速に普及し、今や生活者の日常に根付いたサービスになっています。SVOD利用率の推移(図1)を見ると、2020年に36%だった利用率は、2025年には61%にまで上昇しています。
オリジナル作品や独占配信、特定ジャンルへの特化、他サービスとの連携など、各動画サービスでは多様な戦略がとられています。その結果、生活者のニーズを捉え、SVOD利用者の増加につながっていると考えられます。また最近では、SVODでも広告配信プランが開始され、新たな広告媒体としても注目されています。SVODユーザーの視聴行動特性や利用者像を把握することは、広告媒体としてSVODを検討するうえで、ますます重要になってきています。
■SVOD利用者像の違いをデータから可視化する
ビデオリサーチひと研究所では、今回2つのSVODの利用者について分析しました。なお、具体的なサービス名は伏せ、サービスXとサービスYとして表記します。まず、これらサービスの利用状況を確認しますが、このような分析の場合、従来はアンケートによる利用者調査データを使うことが主流でした。現在では、サービス利用者のログデータの収集および分析が可能になってきていますので、ログデータも用いながら見ていきたいと思います。
次のデータは、SVODの利用状況をログベースで測定し、エピソード(各話)単位で可視化・分析できるサービス「SoDA」から、総視聴人数・総視聴回数・総視聴分数の3指標をまとめたものです(図2)。
(25年1-3月のSoDAデータをもとに集計)
総視聴人数は、サービスXが1,069万人、サービスYが1,157万人で、今回の計測期間ではサービスYの方が多くの利用者を獲得しています。利用者の重複率を見ると、サービスX利用者の36%がサービスYも利用し、サービスY利用者の33%がサービスXも利用しています。互いに3分の1程度の人が重複利用している状況です。そして、いずれかのサービス利用者(1,844万人)のうち、両サービスを併用している人は21%でした。両サービス併用者は一定数存在しますが、限定的であるといえます。
一方、計測期間の総視聴回数と総視聴分数を見ると、サービスXは視聴回数22億回・視聴分数約730億分、サービスYは視聴回数9億回・視聴分数約300億分でした。両サービスとも利用者数は近いため、単純比較であっても、サービスX利用者には動画コンテンツを習慣的に視聴する傾向が強いことがうかがえます。
補足として、別調査データ(アンケート)ではありますが、サービスXとサービスYの性年齢構成も確認します(図3)。比較すると、サービスX利用者は男女20~34歳および女性50~69歳の構成比が多く、サービスY利用者は男性35~49歳・50~69歳の構成比が多くなっています。この性年代構成の違いも、先ほどの習慣的な視聴行動の差に影響していると考えられます。
■アニメの“第1話”の視聴行動に違いあり
ここからは、サービスXとサービスYにおける視聴行動の違いを具体的に確認するため、テレビアニメに注目して分析します。2025年1月クールに放送されたテレビアニメシリーズ3作品を対象に、SVODでの各話視聴者数の変化を「SoDA」のデータを基に指数化して比較しました(図4)。
※視聴人数について、全話平均を100とした場合の相対値を算出。
グラフは、各話の視聴人数指数を実線で示しており、点線は2話から最終話の視聴人数に基づく近似直線(回帰直線)です。実線と点線が重なる部分は、2話以降の平均的な変動と一致していることを意味します。
※近似直線:散在するデータ全体の傾向を把握するために引かれる直線。
結果を見ると、サービスXは第1話から最終話まで実線が点線とほぼ重なる、または近い値となっていました。一方、サービスYはどの作品でも第1話の実線が点線より大きく上振れしています。つまり、サービスYでは第1話のみを視聴する人が多い傾向が読み取れます。理由は複数考えられますが、例えばサービスYの利用者は、気になる作品を「おためし」で第1話だけ視聴する様子が想像できます。
以上のように、利用者規模が同程度のSVODであっても、利用者属性・視聴回数・視聴分数・コンテンツ視聴の仕方は異なります。背景には、各SVODの契約・利用動機の違いや、番組・コンテンツ視聴への熱量・こだわりの差など、様々な要因があると考えられます。
今後、広告媒体としてSVODの活用を進めていくうえでは、こうした利用者像の違いをより明確化していく必要があります。そのために、従来のアンケートによる利用者調査データに加えて、今回の「SoDA」のような、視聴者の視聴行動や視聴コンテンツに関するログデータの活用が有効な手段になります。コンテンツや広告の価値をより明確に示すためにも、コンテンツ単位での視聴ログデータの活用拡大が重要になってきています。
【データ出典】
「SoDA」(SoDAはDigital i社との協業によりビデオリサーチグループにて代理販売)
集計期間:2025年1月1日~2025年3月31日
対象国:日本
対象デバイス:テレビ・スマートフォン・PCなど
『SoDA』は、4大陸に日本を含む20カ国(日/韓/米/英/仏/独/伊/西など)を対象に、パネル調査で定額制動画配信プラットフォーム(SVOD)の視聴に関するデータ(各パネルのアカウント単位の視聴ログ)を収集しており、エリア別、プラットフォーム別、作品ジャンル別、コンテンツ別の視聴分析などを実施しています。※エリアによって測定対象のプラットフォームは異なります。
ビデオリサーチ「ACR/ex」
調査時期:2020年~2025年(各年4-6月)
対象地区:7地区計(札幌・仙台・東京50km圏・名古屋・関西・広島・北部九州)
対象者属性:男女12~69歳







