CPD本部CPD局 第2部
大山 未聖
炎上を狙っていない広告が炎上する。大真面目につくったはずなのに、大炎上する。その原因の一つに、「アンコンシャスバイアス」を含んでいることが挙げられると思う。
無自覚を、自覚する
炎上を狙っていない広告が炎上する。大真面目につくったはずなのに、大炎上する。
その原因の一つに、「アンコンシャスバイアス」を含んでいることが挙げられると思う。「アンコンシャスバイアス」とは、無意識のうちに思い込んだり決めつけたりしている偏見や先入観のことだ。
カテゴリーに人や物事を当てはめようとすると、ずれが生じる。他者から指摘されなければそのずれは訂正されず、誤ったままの状態で広告として世に出てしまう。結果として、好感度を得るどころか見た人を傷つけ、不快感を煽って炎上するという仕組みだ。
偏見や先入観は「無意識」であるがゆえに個人の力だけで修正するのは難しい。私たちが自身のアンコンシャスバイアスに気づくためには、他者と対話し、指摘し合うことが重要な役割を果たす。広告を公開する前に多様な意見を収集することで、意図しない炎上は未然に防げるだろう。
私自身、アンコンシャスバイアスを含む言葉で人を傷つけ、指摘されてから気づいた経験がある。高校を卒業してすぐの頃、友人に「女々しい」と言ったら烈火のごとく怒られた。謝ったものの、そのとき友人が何に怒りを感じているのか、本質的には理解できなかった。数年後、大学でジェンダーの授業を受けて、ようやくその意味を理解した。
「女々しい」を辞書で引くと「態度や気性が柔弱である」と出る。男性に対して使われるが、意味が男性に失礼であると同時に女性を貶めている。このようなネガティブな意味を持つ言葉に「女」という漢字が使われているのはなぜだろうか。「女性は弱弱しく、意気地がない性質だ」という思い込みは私たちの可能性を狭め、未来を窮屈にする。
それに気づかなかったのは私にアンコンシャスバイアスがあり、言葉を受け取る相手の気持ちを考えていなかったからだ。あの時に友人が怒ってくれなかったら、私は今もアンコンシャスバイアスを自覚しないままだったかもしれない。誰しもアンコンシャスバイアスは無自覚に持っているが、自分にもあると自覚していれば、人の意見に素直に耳を傾けることができる。
広告業界で働く一員として、もっと色々な人と対話して、社会の声を深堀って、他者の視点に立って考えることを忘れないようにしたい。そして、指摘されるのにも指摘するのにも臆さないでいたい。そうすれば思い込みで可能性を潰さず、みんなでアイデアを広げて今までにないおもしろい広告がつくれるはずだ。