(株)電通にてCR諸領域を担当、(株)電通西日本常務執行役員を経て、現在広告電通賞審議会事務局長、日本広告業協会制作取引委員会委員長。2023年JAAA吉田秀雄記念賞、24年JAA白川忍賞を字幕付きCM普及推進チームで受賞。TCC会員。
最近は新刊も手を出しますが、昔読んだものをまた拾い読みすることも増えてきました。広告コミュニケーションで大事なのは、それを受け取る人と社会への洞察力を持つこと、広告主の求めることを正しく「言語化・見える化」すること、と考えてきました。
最近は新刊も手を出しますが、昔読んだものをまた拾い読みすることも増えてきました。広告コミュニケーションで大事なのは、それを受け取る人と社会への洞察力を持つこと、広告主の求めることを正しく「言語化・見える化」すること、と考えてきました。そのような視点から新旧三冊をご紹介します。
貞観政要 全訳注 (講談社学術文庫)
七世紀「貞観の治」の主役、唐の皇帝太宗と臣下の議論の記録という本ですが、日本では平安・中世・近世から現代まで読み継がれ、解説本もたくさん。江戸期は大名、現代は企業のお偉い方の必読書と言われもしますね。人類史上必ず上下関係はできる。そういう中で人々が悩んだり怒ったりするのは、宮廷でも会社でもいつまでも変わらんなあ、という気持ちで読むと面白い。「貞観政要」そのものも何種類も出ています。解説本も百家争鳴で出ております。が、書店や図書館で手に取って読みやすいものを先ずは読んでみてください。
夜と霧 ヴィクトール・E・フランクル 新版池田香代子 (翻訳) 旧版霜山徳爾 (翻訳)(みすず書房)
旧訳新訳が平行して出ています。どちらで読まれても良いと思います。霜山訳で中高生時代に読んだ人も多いのではないでしょうか。今年は収容所からの解放80年、数少ない生存者の報道がしばしばあります。明日にも命を奪われるという極限状態で人が何を思うか、の貴重な記録と思索の本です。自分のことはさておき最後まで自分の食糧を分け与えようとする人、一方でそのような状況でもモノを盗む人がいる。性善説であるべきか性悪説であるべきか、などなど改めて人間とは何かを考える書籍として時々読み返します。
歌集 ゆふすげ 美智子上皇后(岩波書店)
大学の専攻が中世国文学でしたので普通の人より和歌には親しんできました。和歌は日本語の美しさを語る最高の術の一つだと思います。万葉から現代まで様々な歌詠みは存在しますが、上皇后は和歌史において素晴らしい歌人だと思います。数十年にわたり上皇后の詠んだ歌から永田和宏さんが選んだもので、刊行されたばかりですが、日本語のかすかなふるえのような微妙さ、歌詠みのこころの繊細さを知る本です。