組織におけるAI活用術

AIと描く未来、働き方と組織の固定概念を変革し共に成長する物語。その先駆者となるマーケティング領域での実践的アプローチを、具体的な活用事例から探る。

組織におけるAI活用術

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AIと描く未来、働き方と組織の固定概念を変革し共に成長する物語。その先駆者となるマーケティング領域での実践的アプローチを、具体的な活用事例から探る。

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AIと描く未来、働き方と組織の固定概念を変革し共に成長する物語。その先駆者となるマーケティング領域での実践的アプローチを、具体的な活用事例から探る。

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中原 柊

中原 柊

Hakuhodo DY ONE
Hakuhodo DY ONE

DXコンサルティング本部DXコンサルティング局
チーフAIストラテジスト


大手コンサルティングファーム、クリエイティブ系法人向けスタートアップを経て、現職。メディア、Webサービス、通信、エネルギー業界を中心に、DX企画、AI実装、CX改革、事業戦略、販促領域などに携わる。 コンサルティング活動の傍ら、社内DX部門にて外部情報発信やAI系スタートアップとの協業に従事。クリエイティブ系法人向けSaaS企業にてCustomer Successを立上げ、契約更新率の大幅改善を達成。新規プロダクトの立ち上げ等も主導。現職においてはDXコンサルティング事業/組織の立ち上げを主導しながら、プロジェクトリード、及び、ブランディング/マーケティング活動に従事。また、博報堂DYグループでAI活用を進めるHCAI Instituteへ所属。主な著書に『DXの真髄に迫る』(共著/東洋経済新報社)。

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前回まで、AIが組織の発想を均質化させるという問題を掘り下げてきた。第1回では、個人の発想は狭まらないのにグループとしてのアイデアが収斂する構造を確認した。第2回では、モデルの世代交代やプロンプトの工夫では、この均質化は解消しないかもしれないということを紹介した

第15回 均質化の先にある問題
——アイデアへの当事者意識が失われていく。


前回まで、AIが組織の発想を均質化させるという問題を掘り下げてきた。第1回では、個人の発想は狭まらないのにグループとしてのアイデアが収斂する構造を確認した(※1)。第2回では、モデルの世代交代やプロンプトの工夫では、この均質化は解消しないかもしれないということを紹介した(※2)。

今回は、均質化に深く関わりつつ、おそらくそれ以上に組織にとって深刻かもしれない問題を取り上げたい。AIとの協働が、アイデアに対するコミットメントを奪うかもしれないということだ。

1,126名の実験が示した「当事者意識の喪失」

ミュンヘン大学のMaierらは、AIと人間の協働がアウトプットに何をもたらすかを、計1,126名が参加した実験で検証した(※3)。2026年のCHI(コンピュータと人間のインタラクションに関する国際会議)に採択された研究だ。

参加者は自動車のセンサー技術を活用した新しい製品アイデアを考えるタスクに取り組んだ。AIとの関わり方を以下の5つのパターンに分け、出来上がったアイデアの品質、多様性、そして「このアイデアに自分は実質的に貢献した」と感じるかどうか(当事者意識)を測定した。

•      Question-Mode:人間が考え、AIが問いかけを返す

•      Suggestion-Mode:AIが助言を返す

•      Model-Led:AIがアイデアを主導して書き換える

•      Vanilla:通常のチャット型のAI

•      Control:AIなし

まず、この連載の文脈で確認しておきたいのは、やはりここでも均質化は起きていたということだ。AIがアイデアを主導して書き換える条件では、アイデアの多様性が低下していた。前回までに見てきた構造が、この研究でも再現されている。

だが、今回注目したいのはその先にある。この研究では、AIがアイデアを主導して書き換える条件と、人間が考えてAIが問いかけを返す条件を比較したとき、当事者意識に大きな差が出た。AIにアイデアを任せた参加者は、自分で考えてAIと対話した参加者に比べて、当事者意識が有意に低かった。この結果は、検証のために別途640名を対象に行った実験でも再現され、むしろ差はさらに大きくなった。

さらに印象的なのは、参加者の行動だ。研究チームが対話ログを詳細に分析したところ、AIにアイデアを任せた条件では、参加者の90%がAIの出力をそのまま受け入れ、自分で手を加えていなかった。

図:AIとの協働モード別に見た、アイデアの品質・多様性・当事者意識の分布
左から「アイデアの品質」「アイデアの多様性」「当事者意識(Perceived IdeaOwnership)」。5つの条件は、Question-Mode(人間が考え、AIが問いかける)、Suggestion-Mode(AIが助言する)、Model-Led(AIがアイデアを書き換える)、Vanilla(通常のチャット)、Control(AIなし)。Model-Ledは品質を上げるが、多様性と当事者意識が低下している点に注目。出典:Maier, Schneider & Feuerriegel (2026) Figure 3より引用。

実務現場でも感じる「熱量の低下」

この知見は、僕がワークショップやプロジェクトの現場で感じていることと重なる。

「ここはAIが出してきたアイデアなんですけど」「このあたりはちょっとAIが書いたところなので、僕もよくわかっていないんですが」。そういった発言を聞く機会は日常茶飯事ではないだろうか。アウトプットに対する責任感や、そのアイデアを何としても実現したいという熱意が、薄まっていると感じる場面もある。第1回で紹介したAndersonらの研究でも、AI使用時にアイデアへの責任感が有意に低下していた(※1)。当事者意識の希薄化は、複数の研究で繰り返し観察されている現象だ。

アイデアは「出して終わり」ではない。それを実現まで導けるかどうかは、関わる人間の責任感と熱意にかかっている。均質化と当事者意識の喪失。この2つが同時に進行するとき、組織の創造力は二重に蝕まれる。

<出典情報>

※1 本連載第13回。Anderson, B.R., Shah, J.H., & Kreminski, M. (2024).“Homogenization Effects of Large Language Models on Human Creative Ideation.”C&C ’24, ACM.

※2 本連載第14回。Haase, J. et al. (2025). Journal of Creativity, 35. / Moon, K. etal. (2025). Thinking Skills and Creativity, 56.

※3 Maier, S.,Schneider, M. & Feuerriegel, S. (2026). “Partnering with Generative AI:Experimental Evaluation of Human-Led and Model-Led Interaction in Human-AICo-Creation.” CHI ’26, ACM.(全文:https://arxiv.org/abs/2510.23324)

第15回 均質化の先にある問題
——アイデアへの当事者意識が失われていく。


前回まで、AIが組織の発想を均質化させるという問題を掘り下げてきた。第1回では、個人の発想は狭まらないのにグループとしてのアイデアが収斂する構造を確認した(※1)。第2回では、モデルの世代交代やプロンプトの工夫では、この均質化は解消しないかもしれないということを紹介した(※2)。

今回は、均質化に深く関わりつつ、おそらくそれ以上に組織にとって深刻かもしれない問題を取り上げたい。AIとの協働が、アイデアに対するコミットメントを奪うかもしれないということだ。

1,126名の実験が示した「当事者意識の喪失」

ミュンヘン大学のMaierらは、AIと人間の協働がアウトプットに何をもたらすかを、計1,126名が参加した実験で検証した(※3)。2026年のCHI(コンピュータと人間のインタラクションに関する国際会議)に採択された研究だ。

参加者は自動車のセンサー技術を活用した新しい製品アイデアを考えるタスクに取り組んだ。AIとの関わり方を以下の5つのパターンに分け、出来上がったアイデアの品質、多様性、そして「このアイデアに自分は実質的に貢献した」と感じるかどうか(当事者意識)を測定した。

•      Question-Mode:人間が考え、AIが問いかけを返す

•      Suggestion-Mode:AIが助言を返す

•      Model-Led:AIがアイデアを主導して書き換える

•      Vanilla:通常のチャット型のAI

•      Control:AIなし

まず、この連載の文脈で確認しておきたいのは、やはりここでも均質化は起きていたということだ。AIがアイデアを主導して書き換える条件では、アイデアの多様性が低下していた。前回までに見てきた構造が、この研究でも再現されている。

だが、今回注目したいのはその先にある。この研究では、AIがアイデアを主導して書き換える条件と、人間が考えてAIが問いかけを返す条件を比較したとき、当事者意識に大きな差が出た。AIにアイデアを任せた参加者は、自分で考えてAIと対話した参加者に比べて、当事者意識が有意に低かった。この結果は、検証のために別途640名を対象に行った実験でも再現され、むしろ差はさらに大きくなった。

さらに印象的なのは、参加者の行動だ。研究チームが対話ログを詳細に分析したところ、AIにアイデアを任せた条件では、参加者の90%がAIの出力をそのまま受け入れ、自分で手を加えていなかった。

図:AIとの協働モード別に見た、アイデアの品質・多様性・当事者意識の分布
左から「アイデアの品質」「アイデアの多様性」「当事者意識(Perceived IdeaOwnership)」。5つの条件は、Question-Mode(人間が考え、AIが問いかける)、Suggestion-Mode(AIが助言する)、Model-Led(AIがアイデアを書き換える)、Vanilla(通常のチャット)、Control(AIなし)。Model-Ledは品質を上げるが、多様性と当事者意識が低下している点に注目。出典:Maier, Schneider & Feuerriegel (2026) Figure 3より引用。

実務現場でも感じる「熱量の低下」

この知見は、僕がワークショップやプロジェクトの現場で感じていることと重なる。

「ここはAIが出してきたアイデアなんですけど」「このあたりはちょっとAIが書いたところなので、僕もよくわかっていないんですが」。そういった発言を聞く機会は日常茶飯事ではないだろうか。アウトプットに対する責任感や、そのアイデアを何としても実現したいという熱意が、薄まっていると感じる場面もある。第1回で紹介したAndersonらの研究でも、AI使用時にアイデアへの責任感が有意に低下していた(※1)。当事者意識の希薄化は、複数の研究で繰り返し観察されている現象だ。

アイデアは「出して終わり」ではない。それを実現まで導けるかどうかは、関わる人間の責任感と熱意にかかっている。均質化と当事者意識の喪失。この2つが同時に進行するとき、組織の創造力は二重に蝕まれる。

<出典情報>

※1 本連載第13回。Anderson, B.R., Shah, J.H., & Kreminski, M. (2024).“Homogenization Effects of Large Language Models on Human Creative Ideation.”C&C ’24, ACM.

※2 本連載第14回。Haase, J. et al. (2025). Journal of Creativity, 35. / Moon, K. etal. (2025). Thinking Skills and Creativity, 56.

※3 Maier, S.,Schneider, M. & Feuerriegel, S. (2026). “Partnering with Generative AI:Experimental Evaluation of Human-Led and Model-Led Interaction in Human-AICo-Creation.” CHI ’26, ACM.(全文:https://arxiv.org/abs/2510.23324)

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