組織におけるAI活用術

AIと描く未来、働き方と組織の固定概念を変革し共に成長する物語。その先駆者となるマーケティング領域での実践的アプローチを、具体的な活用事例から探る。

組織におけるAI活用術

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AIと描く未来、働き方と組織の固定概念を変革し共に成長する物語。その先駆者となるマーケティング領域での実践的アプローチを、具体的な活用事例から探る。

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中原 柊

中原 柊

Hakuhodo DY ONE
Hakuhodo DY ONE

DXコンサルティング本部DXコンサルティング局
チーフAIストラテジスト


大手コンサルティングファーム、クリエイティブ系法人向けスタートアップを経て、現職。メディア、Webサービス、通信、エネルギー業界を中心に、DX企画、AI実装、CX改革、事業戦略、販促領域などに携わる。 コンサルティング活動の傍ら、社内DX部門にて外部情報発信やAI系スタートアップとの協業に従事。クリエイティブ系法人向けSaaS企業にてCustomer Successを立上げ、契約更新率の大幅改善を達成。新規プロダクトの立ち上げ等も主導。現職においてはDXコンサルティング事業/組織の立ち上げを主導しながら、プロジェクトリード、及び、ブランディング/マーケティング活動に従事。また、博報堂DYグループでAI活用を進めるHCAI Instituteへ所属。主な著書に『DXの真髄に迫る』(共著/東洋経済新報社)。

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AIを活用した取り組みが活動計画に一つも盛り込まれていない組織のほうが、今や少数派だろう。2~3年前とは状況がまるで異なる。社内のあらゆる部門がAIに関心を持ち、それぞれに投資を進めている。

第12回 「自分たちだけでやらない」―社内相乗りで短期ROIの壁の突破を探る


AIを活用した取り組みが活動計画に一つも盛り込まれていない組織のほうが、今や少数派だろう。2~3年前とは状況がまるで異なる。社内のあらゆる部門がAIに関心を持ち、それぞれに投資を進めている。

 

であれば、全社的な視点で考えると、組織間の重複投資を避けることはこれまで以上に重要な関心事となるはずだ。数年前なら自部門で独自に投資しなければならなかったことも、他部門への「相乗り」をキーワードに再考できるかもしれない。

 

本稿のテーマは、この「相乗り」という発想だ。

マーケティング部門の特徴 | 短期ROIの壁

マーケティング組織がAI活用を推進するにあたって、構造的な課題がある。ROI(投資対効果)への要求が他部門と比べても厳しいという現実だ。これは印象論と断りを入れつつも、私がさまざまな企業を見てきた中で強く感じるところである。売上にダイレクトに関わる部門であるがゆえに、施策を打つ前に明確なROIの提示を求められる傾向がある。

 

制作コストの削減やAIO(AI最適化)対策のような売上直結型のAI活用は推進しやすい。しかし、AIリテラシーの底上げ、データ整備、カルチャー変革といった中長期的に不可欠な投資については足枷となる。人材育成の研修一つとっても、投資対効果を厳密に数値化することなど本来できるものではない。「やらなければならない。しかし、投資の承認を得ることが難しい」。そんな声を、少なからず聞いてきた。

 

「相乗り」できる投資が、社内に眠っているかもしれない

ここで検討したいのが、「他の組織への相乗り」という発想だ。

 

もはやAIに関心を持たない組織のほうが少ない時代である。特にエンタープライズ企業においては、社内のあらゆる部門でAI関連の活動が同時多発的に進んでいる。自分たちが独自に投資しようとしていることと、すでに他部門が取り組んでいることが重複しているケースは、かなりの確率で存在するはずだ。基礎的なAIリテラシー研修や教育コンテンツなどは、その筆頭だろう。自分たちで一から作るよりも先に、まずは社内を「聞きまくってみる」ことを勧めたい。

 

他部門の「具体的なニーズ」を知ることが、連携の鍵になる

 相乗りを実現するうえで重要なのは、他部門が何に困り、何を求めているかという具体的なニーズを捉えることだろう。連携先の参考として、いくつかの例を挙げてみたい。

 

まず、IT部門やDX推進部門。彼らの中には自社のテクノロジーブランディングを強化したいというニーズを持っていることがある。具体的には、DX関連の外部表彰や認定を獲得するための「ネタ探し」に取り組んでいるケースだ。マーケティング部門の取り組みは顧客接点に近く外向きであるがゆえに、こうした発信とも相性が良い。AI関連の取り組みを共有するだけで、彼らにとっては価値ある情報となり得る。

 

次に、広報やインナーブランディングを担う部門。DX・AI関連の取り組みは、社内外への発信コンテンツとして以前から引きが強いテーマだ。AIというキーワードでこうした発信に取り組んでいる企業も増えている。クリエイティブ制作の文脈でも扱うテーマが重なることがあり、積極的な情報交換先として悪くないだろう。

 

さらに、人事・人材開発系の部門。彼らにとっては、提供する研修やプログラムがどれだけ社内に届いているかが一つの評価ポイントとなっていることが多い。マーケティング部門として積極的にこうしたプログラムに参加することは、彼らの実績にもプラスとなる。その見返りとして、自部門向けのサポートを相談してみるのも意外と現実的な一手かもしれない。

 

実際にある企業では、自社のミッション・ビジョン・バリューを策定する組織が「AI時代の目指すべき人材像」に取り組んでおり、その成果をマーケティング部門のAI人材育成にも活用していた。

 

そして見逃せないのは、これらの部門は経営とのつながりも強いということだ。連携を深めることが、結果的に経営層との関係強化にもつながりやすい。

 

従来、マーケティング部門の社内連携といえば、データ関連部門やセールス部門が中心だっただろう。しかし、AIという切り口を持つことで、その他の部門ともつながる余地が生まれている。相手の具体的なニーズを捉え、互いにとっての価値を見出すこと。それが、相乗りを単なる「もらう」行為から双方向の連携へと昇華させる鍵となるだろう。

 

「自分たちだけでやらない」。限りあるリソースを、本当に自分たちにしかできないことに集中させる。社内のあらゆる部門がAIに動き出した今だからこそ可能になった、この発想が一つの重要な戦略ではないだろうか。

〖今日のプロンプトサンプル:商品の具体的な利用シーンをニッチなものも含めてリストアップする〗

以下は、特定の商品やサービスについて、マーケティング担当者が見落としがちなニッチな利用シーンまで幅広く洗い出すためのプロンプトです。ターゲットや商品カテゴリを書き換えて使ってみてください。

あなたは、生活者の行動観察に長けたエスノグラファー(行動観察の専門家)です。以下の商品について、想定されるあらゆる利用シーンを、メジャーなものからニッチなものまで網羅的にリストアップしてください。

#対象商品:
・商品名/カテゴリ:[例:炭酸水(無糖・500mlペットボトル)]
・商品の基本的な特徴:[例:強炭酸、無糖、持ち運びやすいサイズ]

#リストアップの方針:
・まず、誰もが思いつく「王道の利用シーン」を5つ挙げてください。
・次に、特定の職業、趣味、生活習慣、季節、場所、心理状態などに紐づいた「ニッチな利用シーン」を10以上挙げてください。
・各シーンには、利用する人物像(年齢、職業、状況など)と、なぜその場面でこの商品が選ばれるのかの理由を簡潔に添えてください。
・「こんな使い方をしている人がいたら面白い」という、大胆な仮説も歓迎します。

#アウトプットの形式:
・王道シーンとニッチシーンを明確に分けて記述してください。
・各シーンは「シーン名|人物像|選ばれる理由」の形式で簡潔にまとめてください。

第12回 「自分たちだけでやらない」―社内相乗りで短期ROIの壁の突破を探る


AIを活用した取り組みが活動計画に一つも盛り込まれていない組織のほうが、今や少数派だろう。2~3年前とは状況がまるで異なる。社内のあらゆる部門がAIに関心を持ち、それぞれに投資を進めている。

 

であれば、全社的な視点で考えると、組織間の重複投資を避けることはこれまで以上に重要な関心事となるはずだ。数年前なら自部門で独自に投資しなければならなかったことも、他部門への「相乗り」をキーワードに再考できるかもしれない。

 

本稿のテーマは、この「相乗り」という発想だ。

マーケティング部門の特徴 | 短期ROIの壁

マーケティング組織がAI活用を推進するにあたって、構造的な課題がある。ROI(投資対効果)への要求が他部門と比べても厳しいという現実だ。これは印象論と断りを入れつつも、私がさまざまな企業を見てきた中で強く感じるところである。売上にダイレクトに関わる部門であるがゆえに、施策を打つ前に明確なROIの提示を求められる傾向がある。

 

制作コストの削減やAIO(AI最適化)対策のような売上直結型のAI活用は推進しやすい。しかし、AIリテラシーの底上げ、データ整備、カルチャー変革といった中長期的に不可欠な投資については足枷となる。人材育成の研修一つとっても、投資対効果を厳密に数値化することなど本来できるものではない。「やらなければならない。しかし、投資の承認を得ることが難しい」。そんな声を、少なからず聞いてきた。

 

「相乗り」できる投資が、社内に眠っているかもしれない

ここで検討したいのが、「他の組織への相乗り」という発想だ。

 

もはやAIに関心を持たない組織のほうが少ない時代である。特にエンタープライズ企業においては、社内のあらゆる部門でAI関連の活動が同時多発的に進んでいる。自分たちが独自に投資しようとしていることと、すでに他部門が取り組んでいることが重複しているケースは、かなりの確率で存在するはずだ。基礎的なAIリテラシー研修や教育コンテンツなどは、その筆頭だろう。自分たちで一から作るよりも先に、まずは社内を「聞きまくってみる」ことを勧めたい。

 

他部門の「具体的なニーズ」を知ることが、連携の鍵になる

 相乗りを実現するうえで重要なのは、他部門が何に困り、何を求めているかという具体的なニーズを捉えることだろう。連携先の参考として、いくつかの例を挙げてみたい。

 

まず、IT部門やDX推進部門。彼らの中には自社のテクノロジーブランディングを強化したいというニーズを持っていることがある。具体的には、DX関連の外部表彰や認定を獲得するための「ネタ探し」に取り組んでいるケースだ。マーケティング部門の取り組みは顧客接点に近く外向きであるがゆえに、こうした発信とも相性が良い。AI関連の取り組みを共有するだけで、彼らにとっては価値ある情報となり得る。

 

次に、広報やインナーブランディングを担う部門。DX・AI関連の取り組みは、社内外への発信コンテンツとして以前から引きが強いテーマだ。AIというキーワードでこうした発信に取り組んでいる企業も増えている。クリエイティブ制作の文脈でも扱うテーマが重なることがあり、積極的な情報交換先として悪くないだろう。

 

さらに、人事・人材開発系の部門。彼らにとっては、提供する研修やプログラムがどれだけ社内に届いているかが一つの評価ポイントとなっていることが多い。マーケティング部門として積極的にこうしたプログラムに参加することは、彼らの実績にもプラスとなる。その見返りとして、自部門向けのサポートを相談してみるのも意外と現実的な一手かもしれない。

 

実際にある企業では、自社のミッション・ビジョン・バリューを策定する組織が「AI時代の目指すべき人材像」に取り組んでおり、その成果をマーケティング部門のAI人材育成にも活用していた。

 

そして見逃せないのは、これらの部門は経営とのつながりも強いということだ。連携を深めることが、結果的に経営層との関係強化にもつながりやすい。

 

従来、マーケティング部門の社内連携といえば、データ関連部門やセールス部門が中心だっただろう。しかし、AIという切り口を持つことで、その他の部門ともつながる余地が生まれている。相手の具体的なニーズを捉え、互いにとっての価値を見出すこと。それが、相乗りを単なる「もらう」行為から双方向の連携へと昇華させる鍵となるだろう。

 

「自分たちだけでやらない」。限りあるリソースを、本当に自分たちにしかできないことに集中させる。社内のあらゆる部門がAIに動き出した今だからこそ可能になった、この発想が一つの重要な戦略ではないだろうか。

〖今日のプロンプトサンプル:商品の具体的な利用シーンをニッチなものも含めてリストアップする〗

以下は、特定の商品やサービスについて、マーケティング担当者が見落としがちなニッチな利用シーンまで幅広く洗い出すためのプロンプトです。ターゲットや商品カテゴリを書き換えて使ってみてください。

あなたは、生活者の行動観察に長けたエスノグラファー(行動観察の専門家)です。以下の商品について、想定されるあらゆる利用シーンを、メジャーなものからニッチなものまで網羅的にリストアップしてください。

#対象商品:
・商品名/カテゴリ:[例:炭酸水(無糖・500mlペットボトル)]
・商品の基本的な特徴:[例:強炭酸、無糖、持ち運びやすいサイズ]

#リストアップの方針:
・まず、誰もが思いつく「王道の利用シーン」を5つ挙げてください。
・次に、特定の職業、趣味、生活習慣、季節、場所、心理状態などに紐づいた「ニッチな利用シーン」を10以上挙げてください。
・各シーンには、利用する人物像(年齢、職業、状況など)と、なぜその場面でこの商品が選ばれるのかの理由を簡潔に添えてください。
・「こんな使い方をしている人がいたら面白い」という、大胆な仮説も歓迎します。

#アウトプットの形式:
・王道シーンとニッチシーンを明確に分けて記述してください。
・各シーンは「シーン名|人物像|選ばれる理由」の形式で簡潔にまとめてください。