ストラテジスト
東京、ロンドン、パリ。3つの都市で、マルチナショナル・クリエイティブエージェンシーのストラテジックプランナーとして20年ほど勤務。
異なる文化をつなぐコンサルタント。
ストラテジスト
東京、ロンドン、パリ。3つの都市で、マルチナショナル・クリエイティブエージェンシーのストラテジックプランナーとして20年ほど勤務。
異なる文化をつなぐコンサルタント。
2023年7月24日、高級ブランドグループのLVMHが2024年夏にパリで開催されるオリンピック・パラリンピック競技大会のスポンサー契約を締結したことを発表した。世界最大のラグジュアリーブランドグループがプレミアム・パートナーとなることのイメージ的なインパクトに加えて、大会組織委員会の予算のスポンサー料でカバーする分を2023年内に確保できるかどうかがLVMHとの契約にかかっていただけに、メディアにも注目されていた案件である。
個々のブランドがイベントや選手と契約することはあっても、LVMHグループとしてグローバルな大スポーツイベントのスポンサーになるのは初。LVMHがこの契約に求めたベネフィットは何か。フランスを代表する大企業として財政的な懐の深さをアピールする必要は今更あまりない。ロゴの露出によってブランドの認知ベースを広げることもLVMHブランドのターゲットマーケットからすると2次的に思われる。また、あくまでも大会開催国のローカルパートナー契約なため、フランス以外でブランドを露出する権利は含まれない。LVMHの会長兼最高経営責任者、ベルナール・アルノー氏の息子で後継者のアントワーヌ・アルノー氏によると、時間をかけて大会組織委員会及びIOCとも細かく交渉してきた狙いは「クリエイティブ・パートナー」として大会に積極的に参加すること。契約締結直後に公開されたLVMHのオリンピック協賛ミッションビデオによると、LVMHグループの持つクリエイティビティ、品質とノウハウを活かしてオリンピック・パラリンピック大会を盛り上げるキープレイヤーになることを目標として掲げている。具体的には、オリンピック・パラリンピックのメダルはLVMHのChaumet(ショーメ)がデザインをすることが決まっている。フランス全土を巡る聖火リレーに伴うアクティベーションはSephora(セフォラ)が行い、VIPラウンジなどにおけるホスピタリティプログラム、特にシャンパンやワイン類はMoët Hennessey(モエ・ヘネシー)が請け負う。メダルを入れるケースはLouis Vuitton(ルイ・ヴィトン)、開会式におけるフランス代表選手団のユニフォームはDior(ディオール)、靴はBerlutti(ベルルッティ)がデザインすると言われている。スポンサーとしての露出はなくとも、国を問わず様々な形で話題、コメントされることは間違いないだろう。
また、LVMHは大会のスポンサーと同時にフランス代表のオリンピック選手とアンバサダー契約を行うことも発表。この夏、世界水泳で400m x 4の世界記録を塗り替えた水泳のレオン・マルシャン選手を早速起用している。
100年ぶりにパリで開催されるオリンピック。開会を約一年後に控えて行われた世論調査によると大多数のフランス人は開催をポジティブなことと捉えているものの、その割合は一年前と比べて下降し続けているとのこと。大会組織委員会にとっての勝負はまだこれからのようだ。
<参照文献>
https://www.cbnews.fr/marques/image-sponsoring-jo-2024-paris-lvmh-se-fait-attendre-73335