山梨県生まれ、武蔵野美大卒。広告制作会社等を経てデザイナーとして廣告社㈱入社。CR・マーケ・メディア・営業・管理部門を経験後、代表取締役社長就任(2016年退任)。著書に『“広告の著作権”実用ハンドブック』(太田出版)、『クリエイターのためのトラブル回避ガイド』(パイ・インターナショナル)、『広告実務と著作権(電子書籍)』(太田出版)、共著に『Q&Aで学ぶ“写真著作権”』(太田出版)などがある。JAAA REPORTS「広告人のための法律知識」を2020年1月号~2026年3月号まで執筆。日本広告学会会員。
これまで本誌では「広告人が知っておくべき法律知識」というテーマで、広く広告実務を取り巻く法律についてお話ししてきました。しかし昨今は広告を取り巻く環境も大きく変わりつつあります
【第1回】コンプライアンスは“想像力”―「法律を知っている」その先へ
これまで本誌では「広告人が知っておくべき法律知識」というテーマで、広く広告実務を取り巻く法律についてお話ししてきました。
しかし昨今は広告を取り巻く環境も大きく変わりつつあります。ある広告表現が問題視されたとき、まず違法かどうかが問われ、その後、世論の評価が定まる、そんな流れは、もはや当たり前ではなくなってきました。
実際には、その広告を見た誰かがSNSで「これっておかしいよね」という指摘をし、それが拡散され、後になって「法律的にもグレーだった」と整理されることも珍しくありません。つまり、法律的には必ずしも問題はないけれど、倫理的に疑問視され、結果として世論が先に結論を出すという順序で進むことが多くなっているように思えます。
例えば広告イラストやキャラクターの類似。なんとなく似ているという印象があれば、著作権法上の解釈(複製権・翻案権の侵害基準)とは無関係にネット上で「パクリ疑惑」が浮上して、最悪、炎上することもありえます。
新たな連載「コンプライアンス時代の法律知識」では、これまで「広告人のための法律知識」で扱ってきた法律について取り上げつつも、一旦立ち止まります。そしてなぜ、その法律が問題になるのか、なぜ、法律の理解だけでは足りないのかを考えます。
多くの炎上は「違法」より「不適切」であることが要因となっているように思われます。また、説明責任には法律ではなく姿勢の説明が問われます。つまり、我々広告人は今、「違法かどうか」より先に、「どう受け取られるか」、このことに思いを馳せること、つまり「知識」の有無ではなく、「想像力」の有無が大きく問われる時代に立っています。
もちろん、法律知識は今も重要です。ただし、それは「答え」ではなく、どう対応すべきかを判断するための材料の一つかもしれません。
新たな連載では様々な実務シーンに応じて、①法律、②倫理・社会通念、 ③世論・感情という3つのファクターを意識し、この3つを行き来する思考を扱います。そしてアドパーソンとして、何をどう想像すべきかを実際の広告現場の感覚に引き寄せて考えていきます。
法律を「知っている」からこそ迷う場面で、その迷いにどう向き合っていくか。それが、このシリーズのテーマです。






