BXデザイン本部 ビジネスイノベーション局
エクスペリエンスデザイナー/クリエイティブ・ディレクター
サステナビリティ・ソリューション担当
外資系企業のビジネスプロデュース部署を経て、統合型クリエイティブプランニング部署にて領域や手法に捉われないニュートラルな視点でのコミュニケーション設計やクリエイティブ開発に従事。現在は主にクライアントのサステナビリティ領域の業務推進を支援。クライアントのCSV経営への取り組みや企業価値の向上に貢献しながら、同時に社会課題を解決することを目指している。
持続可能性開示規制の本格化、機関投資家によるESG評価の厳格化、気候変動リスクの表面化——これらはサステナビリティをCSRから企業経営の必須要件へと押し上げている。もはや「取り組むかどうか」を選択する段階は過ぎ、「いかに自らの姿勢を説明し、社会的正当性を獲得していくか」が問われるフェーズへ移行しつつあると言えるだろう。
「説得」から「対話」へ
サステナビリティ広告の再定義
① 売上と社会的正当性のジレンマ —— 問われるコミュニケーションのあり方
なぜ、今、改めて「サステナビリティ」なのか
持続可能性開示規制の本格化、機関投資家によるESG評価の厳格化、気候変動リスクの表面化——これらはサステナビリティをCSRから企業経営の必須要件へと押し上げている。もはや「取り組むかどうか」を選択する段階は過ぎ、「いかに自らの姿勢を説明し、社会的正当性を獲得していくか」が問われるフェーズへ移行しつつあると言えるだろう。
これに伴い、企業は製品やサービスの価値だけでなく、「なぜ売るのか」「どのように売るのか」という存在理由やプロセスの正当性まで説明する責任を負うようになった。広告もまた消費を促す手段にとどまらず、企業と社会の間に誠実な対話を成立させ、相互をつなぐ「信頼の架け橋」として機能することが期待されているのではないだろうか。
広告の効果と責任のジレンマ
しかし、理想的な理念と現実のマーケティング現場の間には、少なからず乖離が存在しているのも事実である。サステナビリティをメッセージの中心に据えても、短期的な売上増加に直接結びつきにくいのが実情と言える。また、生活者の価値観が多様化するなかで「正解」を一方的に提示する従来型アプローチは、共感と反発の分断を招くリスクをはらんでいる。さらに情報の透明性が高いSNS時代においては、発信と実際の事業活動のズレが即座に可視化され、言葉と行動の不一致がブランド価値に影を落とす要因ともなり得る。
「環境配慮だけでは売れにくい」「一部の層にしか届かない」「短期KPIと両立しにくい」「グリーンウォッシングと批判されるリスクがある」 —— 現場からはこうした切実な声が聞かれる。
これらは運用の工夫だけで解決できるものではなく、「短期成果」と「社会的正当性」、「特定層への深耕」と「社会への波及」、「発信の広がり」と「言行一致の維持」という、複数のジレンマが同時に存在する構造的課題を示していると考えられる。広告はそのすべてにバランスよく向き合わなければならない難題にいま直面していると言えそうだ。
信頼の構造的危機と業界自身の問い直し
透明性が高まった現代においては、企業が「何を買うべきか」を一方的に提示し、生活者がそれを受け入れる過去の広告モデルは変化を余儀なくされている。企業が発する言葉は即座に検証され、約束と現実に乖離があれば、SNSを通じて瞬時に不信感として広がりかねない。経営的に対応が不可欠でありながらマーケティング的に短期売上に繋がりにくい板挟みの中で、企業と生活者の関係は一方向の説得から「相互の信頼に基づく対話」へ質的に転換しつつあるのではないだろうか。
本来、広告は「消費拡大を推進する装置」として進化し、その仕組みを前提に最適化されてきた経緯がある。しかし無条件の消費拡大が正当化されにくくなった今、広告のあり方そのものも根本から問い直されている。
説得力を競う一方的な発信から、企業と社会が多様な視点を包摂しながら信頼を構築する対話の場へ。サステナビリティを軸とした広告が機能するためには、「売る」ための手段を超え、「企業と社会がいかに向き合うべきか」を問い直し、その実行過程を支える役割へと進化していく必要があるのではないだろうか。こうした構造変化に対して、私たちはどう向き合い、いかに実践へ落とし込んでいくのか。その具体的なアプローチを模索していくことが、次なる鍵となるはずだ。









